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二、三年と違って 今年の一年は愛想が悪いのか、
各自で歩いている。各自でとは言いつつも、一人なのは影山だけだが。日向は二、三年と、月島は山口と歩いていた。
『いいの？先輩たちと一緒にいなくても』
影山がきっと一人なのは話す相手がいないからな気がするので、その代わり、一人でいいのか聞く。
影山は一年でAよりも年下なはずなのに、20cm以上大きい。だから、見上げないといけなくて首がつらい。
｢いいっすよ、別に｣
そっけなく答える彼に、あの人と近いものを少し感じた。
｢それよりも先輩、歩きスマホは危険っすよ、しかも暗いんですからやめた方が……｣
『そうだね、そうするよ』
後輩に心配されてしまった。少し恥ずかしく思いながら、Aはスマホをコートのポケットに仕舞った。
｢何してたんすか？｣
『連絡だよ、ちょっとめんどくさい相手にね』
そういうAの顔は、どこか寂しそうにも、悲しそうにも、懐かしむようにも見えた。憂いを帯びた表情は、外が暗くてよく見えなかったけど、とても美しかった。
彼女にとって兄はめんどくさい存在である。誕生日のメッセージは恐ろしいものでしかない。
｢先輩の言う“めんどくさい相手”って誰っすか？｣
｢俺らよりもめんどくさいのか……？｣と顎に手を当て考える影山に、クスリと少し笑って、Aは、
『さぁ、どうだろう？
と、苦笑いして答える。
｢そうっすか｣
影山の表情はよく見えなかったし、声色から何を考えているかわからなかったけど、“兄”について深追いしてこないのはありがたかった。
同時に、相変わらず男の考えていることはわからない。そう思ったが、そんなの女も一緒か、と考えを改めた。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2024年2月7日 17時
