123個 ページ33
「よし、と」
『ねえ、これって敦さんと如何云う関係あるの？』
思い返してみれば僕が敦さんについて知ってる事は
あまり多くない。
初めて逢ったあの日からしか知らない。
敦さんに関係ある問題と言われても何が問題なのか判らない。
「…コレはね、敦君自身、彼に根強く絡まる過去に
関わる問題なのだよ」
『…過去…？』
「そう。敦君は施設の出でね」
詳細は省かれてるだろうけど、それでも大まかな
敦さんの過去、僕が知る前の敦さんについて
教えてもらった。
.
敦さんが孤児院出身である事、
当時は自分の持つ虎の能力を知らなかった事、
その孤児院での出来事が色々とトラウマになってる事、
そして今回の事故で亡くなったのが、その院長で
ある事。
.
「彼が敦君にした事、その真意を知って如何受け入れるか。それは敦君にしか出来ない事だからね」
『……そう』
少し低くなった声に気付いたネコが頭を頬に
すり寄せる。
思い出さなくて良い、そう云うように。
「…敦君は今回で大方ケリがつく。
まぁ、誰しも話したくない過去の一つや二つ在るものだ」
『……』
「…私が君について知っているのは五年前のごく一部でしか無いけど『無いよ』…」
『あんただけじゃ無くて。屹度敦さんにも。
僕が話す事は無いよ』
何だかその場に居たく無くて、ドアの方へと
足を向ける。
聞いたって、何が出来るわけでも無いんだから
呟いた心算の独り言は、事務所に流れる人の騒めきの中でも冷たく響いた。
『……なーんてね。ちょっと外行ってくるよ。
あ、今日こそは煮干し出しといてよ！』
少し早口でまくし立てた後、何故か逃げるように僕はドアを開けて出て行った。
これ以上
彼奴の前にいると余計な事まで探られそうで怖かった。
そんな僕を嘲笑うように自分の影が揺れた。
.
◆ ◆ ◆
.
「……君は…何を抱えているんだい…」
独り寂しく閉まるドアを眺め乍ら、つい口をついて
独り言が漏れる。
人への不信感、それだけじゃ済まないような、
彼一人には重すぎる大きな何か。
いつか話してくれるだろうか。
…私もまた複雑な部下を持ったものだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
闇少女(プロフ) - ありがとうございます！お願いします！ (2018年4月17日 21時) (
レス) id: 86db96a001 (このIDを非表示/違反報告)
のら猫(プロフ) - あ…あ…ありがとうございます…！( ；∀；)黒蜥蜴！確かに出てなかったです！ザアパルク後ら辺にいきます(*´-`) (2018年4月17日 7時) (レス) id: 92e6776368 (このIDを非表示/違反報告)
闇少女(プロフ) - 黒蜥蜴と絡んでほしいです。更新頑張ってください！ (2018年4月16日 17時) (レス) id: 86db96a001 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のら猫 | 作成日時：2018年4月8日 17時
