プール6 ページ10
多川心菜は眠っていた。水辺で。
｢！！？｣
水音に気づいたのか、勢いよく起き上がる。
｢目覚めたみたいだね｣
現実とも夢ともつかない空間に戸惑う彼女に話しかける人影…いや
｢えーと、こ、ここは魚の国！！ さぁ私達と一緒に泳ごうよ！｣
｢…あんた、めぐめぐに似てない？｣
｢…違うし。めぐめぐとか知らないし…魚魚だし｣
｢何その居酒屋みたいな名前！？｣
人ではない、魚。繰り広げられる問答。
｢…わ、私の名前は魚美｣
｢僕の名前は魚太｣
｢私の名前は魚子だよ｣
私、渚、カエデも自己紹介をする。メグの緊張が伝染したのか、私も吃った。
｢魚子は魚なのに浮き輪なの！？｣
｢そして私が魚キング。水世界最強のタコです｣
｢タコかよ！！｣
怒涛のボケ嵐。それに対応している間に、多川は髪を結われ、ストレッチ、早着替え…と魚キングに準備を進められる。
｢そして入水！！｣
｢ぎゃあ！！ みっ水ぅ！？｣
水が怖いのは本当らしい。あたふたと藻掻き、更に沈んでいく。
｢いっ今更いいわよ泳げなくて！！ 泳げないって言っとけば…アンタに似てる友達が私の言う事何でも聞くし！！｣
しかし、本音はここにある。暫く黙った後、メグ…魚魚は多川を無理矢理押す。暴れるので私も増援。
｢まーまー泳いでみなって。…これ以上暴れたら沈めるから｣
｢ヒッ…。なっ…なによぅ、魚の分際で！！｣
そうこうしていると盛大な水しぶき。
｢えっ…｣
水に入った殺せんせーにカエデが驚嘆する。私達もそちらを向く。
｢さて、まずは基本のけのびから｣
｢…それ、けのびじゃないと思うんスけど｣
思わず口から漏れる。ちなみに、今殺せんせーが着ている水着は完全防水でマッハにも耐えられるそうな。
｢数々の秘泳法をご覧あれ｣
バタ足らしい。しかし、次の瞬間
｢もがッ、流され…｣
魚キングによって｢セルフ流れるプール｣が出来上がった。流されそうになる多川。そこに魚魚が駆けつける。こんな状況だからか、多川も練習に入る。
｢水着とかズルいよ、魚キング！！｣
｢生身でも入れるか見たかったのに！！｣
魚太と魚子が言う。
｢入れますよ、生身でも｣
｢…え？｣
投げられる水着を受け取る。ほぼ泳げないと確信していたのに。
！？
｢水に…生身で入ってる？｣
有り得ない、と言わんばかりのカエデ。でも違った。
｢あれは…マッハで周りの水を掻き出してるんだ｣
｢セルフ波のプール｣の完成。
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
