プール3 ページ7
｢はい。大丈夫だよ、茅野さん。すぐ浅いとこ行くからね｣
｢助かった…｣
飛び込んだのはメグ、学級委員長様だ。カエデを後ろから抱えて救助する。
｢ありがとう、片岡さん！！｣
｢…ふふ、水の中なら出番かもね｣
礼を述べるカエデになのか外野になのか、メグは微笑みかけた。
水泳の授業が終わり、クラスメイトたちと集まっていた。
｢まず問題は、殺せんせーが本当に泳げないのかだね｣
｢湿気が多いとふやけるのは前に見たよね｣
議題を提示すると、岡野が言った。梅雨の時期のことである。
｢さっきも…Aが水をかけたとこだけふやけてた｣
磯貝は続ける。
｢もし仮に全身が水でふやけたら…死ぬまではいかなくとも、極端に動きが悪くなる可能性はかなり高い｣
｢だからね、皆｣
そこまでの推理を終えたところで、メグが輪の中心に立った。
｢私の考える計画はこう。どこかのタイミングで殺せんせーを水中に引き込む。それ自体は殺す行為じゃないから…先生の防御反応も遅れるはず。そして、生徒がグサリ！｣
朗々と語るメグ。
｢水中にいるのが私だったらいつでも任せて。髪飾りに仕込んだ対先生ナイフで…いつでも殺れる準備はしてる｣
綺麗なストレートヘア。そこから外したバレッタには確かに小さいナイフが。それを頭に戻しながら彼女は言う。
｢夏は長いわ。じっくりチャンスを狙ってこう！｣
私は男子に混じっていたが球技大会のときといい、今回の暗殺計画といい、先陣を切るメグは学級委員長であるに相応しい人物であることが窺えた。
聞く話によると、女子にモテる｢イケメグ｣だそうだ。カエデが｢惚れそうだった｣と言っているのにも納得する。
私とメグは放課後、プールに来ていた。
メグが泳ぎきり顔を出す。一足遅れて私も到着し、ゴーグルを外した。
｢律、タイムは？｣
｢片岡さんが26秒08、天羽さんが27秒00。片岡さんは50m自己記録には0.7秒届いていません｣
律がご丁寧に画面に表示しながら結果を伝えてくれる。私としては十分な域なのだが、メグは｢ブランクある｣と言っている。
｢確かにこのままじゃ通用しないか…。もっかいお願い｣
メグと位置について泳ぎ出す。とりあえずメグに勝ちにいく勢いで行こう。ちなみに、今は渚とカエデも見ている。
無我夢中に泳いでいると、
ピコン
という電子音。
｢！ 片岡さん、多川心菜という方からメールです｣
｢…あー…友達…｣
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
