南の島10 ページ45
｢よし。普段着だし、こっからは客のフリができる｣
私が誰にともなくそう言うと、
｢客ゥ？ 中学生の団体客なんているのかよ｣
早速菅谷にツッコまれた。
｢それがいるんだよね。芸能人や資産家のボンボンよ。甘やかされてるから、うちらくらいの奴でもヤバーいことやってんの｣
｢そう。だから君達も、そんな輩になったフリで…世の中をナメてる感じで歩いてみましょう｣
殺せんせーが言う。その指令にクラスメイト達は…
ずんずん
｢そうそう、その調子！！｣
血管を浮き立たせたり、不敵に笑って見せたり、白目を向いたり…。
｢この調子…なの？ ただの頭やられた集団なんだけど。あと、殺せんせーまでナメんなよ
シマシマ模様の殺せんせーに一喝入れた。殺せんせーは冗談もここまで、と言わんばかりに顔色を戻すと、
｢ただし…我々も敵の顔を知りません。敵もまた客のフリで襲って来るかもしれない。充分に警戒して進みましょう｣
｢…はい！｣
その後は何とか怪しまれずに進めた。
｢これなら最上階まですんなり行けそだね｣
後方からはこんな声が。まあ、ガチガチに緊張されて怪しまれるよりはマシか。
｢仮に何かあっても…Aが見つけてくれるさ｣
私は期待されているらしい。とにかく先生達に頼ることが出来ない今、指揮を任された私は責務を果たすのみ。そんなことを考えていた、その時。
｢ヘッ、楽勝じゃねーか。時間ねーんだから、さっさと進もうぜ｣
｢ちょっ…｣
寺坂と吉田が前に出た。制止の声も聞かず、一心不乱に突き進む2人。
｢寺坂君！！ そいつ危ない！！｣
｢あ？｣
不破が唐突に叫んだ。私が前の男を凝視したときには手遅れ。驚き振り向く寺坂の奥には、懐に手を忍ばす男の姿。
｢クソッ！！｣
私は1歩踏み込み、2人を後方へ突き飛ばした。
ガス…！
引き換えにまともに浴びたガス。その中で蹴りを繰り出すと、ガスを出したと思われる物は男の手から離れた。
そのままガスの靄から脱出する。
｢…何故わかった？｣
男は口を覆っていた布をズリ下げる。
｢殺気を見せず、すれ違いざま殺る。俺の十八番だったんだがな、オカッパちゃん｣
｢…不破｣
不破はボブだし、と小さく言った。そして推理タイムが始まる。
｢だっておじさん、ホテルで最初にサービスドリンク配った人でしょ？｣
｢…あ！！｣
なるほど。
｢断定するには証拠が弱いぜ。ウィルスを盛る機会は沢山あるだろ｣
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
