南の島8 ページ43
｢どうしますか？｣
殺せんせーは問うた。私は改めてホテルを見上げる。
｢…それは…ちょっと…難しいだろ｣
誰かが声を上げた。
｢そーよ、無理に決まってるわ！！ ホテルにたどりつく前に転落死よ！！｣
ビッチ先生は崖を指さし言う。しかし違った。
｢いやまぁ…崖だけなら楽勝だけどさ｣
皆が軽やかに崖を舞う。私も例外でなく、汗ひとつかかずに付いていく。
｢でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから、烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ｣
磯貝が器用にしゃがみ烏間先生に言った。
私達は暗殺部隊･椚ヶ丘中学校3ｰE。
｢さぁ、時間は無いですよ？｣
烏間先生が目を伏せる。やがてキッと開くと言った。
｢注目！！｣
目標、山頂ホテル最上階
隠密潜入から奇襲への連続ミッション
いつもと違うのは標的のみ
｢19時50分、作戦開始！！｣
｢おう！！｣
私達は威勢の良い応答をした。
｢…なんでこうなったの｣
私は現在、殺せんせーを連れたビッチ先生をおぶって崖を登っている。
｢烏間先生には下にいてもらいましょう。生徒達も心配ですし、外部との連絡を取りやすい｣
ということで、烏間先生はお留守番。磯貝が指揮を託したところだというのに、私に指揮権が委ねられた。
｢うちの先生は動けるのが3人中0人とは…｣
上で何人かが憐れむような目をしている。
｢大体、なんで私？ 指揮なら殺せんせーとか、磯貝、メグ辺りの方が断然取れるでしょ｣
｢先生は動けません。緊急を要する時には皆さんが頼り。それに、こういう場だと君が最大戦力となり得る｣
またも溜息を吐くと同時に、莉桜達の顔を思い浮かべ気を取り直す。
｢いいから早く登んなさいよ！！｣
しかし、背中が重い上にうるさい。
｢フン、足手まといにならなきゃいいけどな｣
カルマグッズの入ったリュックを背負う寺坂の言葉に、ビッチ先生は憤慨。いっそ飛び降りたい。
漸く登りきり、現在入口前。
｢律、電子ロック開けれる？｣
｢はい。また、監視カメラも細工できます。ですが、全ての設備を私ひとりで掌握するのは不可能です｣
律は滔々と話す。
｢分かった、ありがと。…で、こんなかは多分バラバラに階段がある。それを登って最上階まで行かなきゃならない。高さから見積もるに、ざっと10階｣
読みはおそらく間違いない。
｢こりゃあ、悪い宿泊客が愛用するわけだ…｣
菅谷が呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
