南の島3 ページ38
目の前の画面を見ると着々と進んでいる。
｢全力の暗殺を期待してます。君達の知恵と工夫と本気の努力、それを見るのが先生の何よりの楽しみですから｣
見える映像は揺らめいているが、己の耳朶はその声を拾った。
｢遠慮は無用、ドンと来なさい｣
｢言われなくとも上映めるぜ、殺せんせー｣
パチ、という音と共に暗転する画面。もうほとんど見えない。音声で状況を確認していく他なさそうだ。
そっと耳を研ぎ澄ませた。
｢…まずはご覧頂こう。我々の担任の恥ずべき姿を｣
｢にゅやああああ！！！？｣
最初はおそらく、倉橋達と見た殺せんせーの姿が流れていることだろう。
｢おわかり頂けただろうか。最近のマイブームは熟女OL｣
｢違っ…ちょっ岡島君達、皆に言うなとあれほど…｣
慌てふためいても動画は進む。
｢お次はこれだ。女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨影｣
これの情報提供者は私とカエデ。2人で並んでいたら後ろから喧騒が聞こえた。
｢バレないはずがない。女装以前に人間じゃないとバレなかっただけ奇跡である｣
つまみ出される殺せんせー。｢警察｣だとか｢通報｣だとか明らかにまずいワードまで聞こえ、カエデと2人列から抜けてフォローした。
三村の話ではこの動画は1時間続くらしい。こんな煩悩塗れの標的を殺せない自分に苛立つ、そんな1時間だった。
｢…死んだ。もう先生死にました。あんなの知られて、もう生きていけません｣
なら早く死ねよ、という言葉は飲み込む。第一こんな場所にいる中声に出しても届かない、それどころか自分の生命が危うくなりそうだ。
｢さて。秘蔵映像にお付き合い頂いたが、何かお気付きではないだろうか、殺せんせー？｣
チャプ…チャプ…
そう、我々4班が昼間に小屋に小細工をしておいたのだ。満潮になり、海水が侵食していることだろう。
｢さあ本番だ。約束だ、逃げんなよ｣
寺坂は言った。きっと、今まで協力できなかった分を彼なりに返そうと思っているのだろう。返却日もカルマをさり気にフォローしていた。
7つの発砲音。
｢く…っ｣
しかし、殺せんせーの小さな呻きは掻き消された。
｢！！？｣
小屋の壁が吹き飛んだ。
ザンッ
静かながらにして盛大な水音と共にフライボードが舞った。今は殺せんせーを閉じ込める段階。その次には弾幕の檻も張った。
得物を握りしめ全神経を集中させた。
ザバッ
とどめに私、千葉、速水。
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
