昆虫採集2 ページ33
｢南の島で暗殺するって予定だから…あのタコもそれまでは暗殺も無いと油断するはず｣
なるほど。
そこが俺の狙い目だ、と岡島は立ち止まる。そろり、と岡島を少し追い越して前を見ると、
｢…｣
｢クックックッ、かかってるかかってる。俺の仕掛けたトラップに｣
殺せんせーは微動だにせず見入っている。そして謎のカブトムシのコスプレ。ツッコミどころ満載だ。
岡島のスマホを見ると、夏休み前から付けられている毎日の観察レポート。カタツムリ、セミ、クワガタ…。
｢…すごいよ、岡島君｣
｢ていうか、大の大人が1ヶ月連続で拾い読むなよ。買えよ、嘆かわしい｣
とりあえず私はスマホのビデオに収めることにした。
｢蔑む奴はそれでも結構。だがな…そんな俺だから知っている｣
彼は言った。
｢世界を救えるって｣
こんなセリフがビデオに残って良いのだろうか。しかし、最低なのだがカッコいい。
岡島は殺せんせーの下に対先生弾で作ったネットを張っているという。それを発動させ、トドメをさす。
岡島は対先生ナイフを、渚ははさみを手にする。私はスマホ画面の中の殺せんせーを見た。
伸びてる。
目がみょーんって。
｢データに無いぞ。あの顔はどんなのを見た時だ！？｣
普段から情報収集に余念がない渚や観察し続けてきた岡島にさえ分からない。
｢ヌルフフフ、見つけましたよ｣
何を？
殺せんせーは木に触手を伸ばし何かを取った。
｢ミヤマクワガタ。しかも、この目の色！！｣
｢！！ 白なの、殺せんせー！？｣
暗殺のことを忘れるほどなのだろうか。倉橋は迷わず飛び出した。
｢おや、倉橋さん。ビンゴですよ｣
｢すっごーい！！！！｣
スマホの中ではタコと倉橋が本の山の上で飛び跳ねている。しかしやがて、ハッとした表情で自身の下を見て
｢ちょうはずかしい、ちょうはずかしい…｣
と顔を赤くした。
｢面目無い…教育者としてあるまじき姿を…。本の下にワナがあるのは知ってましたが、本の誘惑に耐えきれず｣
すんなりバレていたらしい。
そして、ミヤマクワガタで目がどうの…。
｢もしかしてアルビノなの？｣
｢えぇ、そうです。天然ミヤマのホワイトアイはとんでもなく希少です｣
｢ほぇー…すげぇ｣
殺せんせーは近くで見せてくれた。本当に白い。
｢学術的な価値すらある。売ればおそらく数十万は下らない｣
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
