1学期 期末テスト5 ページ25
瀬尾が放つ渾身の一撃。しかし、問題は倒れない。本人は酷く困惑している。
私は側にいた莉桜と視線を合わせ頷くと、飛び上がり問題の額を突く。
｢お堅いねぇ｣
｢力抜こーよ、優等生！！｣
⑴正直、コックの顔に100回ビンタかましてやりたかったね。
⑵He said “Police！ Police！” and all. That killed me.
一撃必殺。問題は崩れ落ち、はなまるを残して散った。瀬尾は私達を凝視している。
｢多分読んでないっしょ？ サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』｣
名作からの引用は一瞬で気づいた。
｢ほんと、E組に対して手厳しい問題だわ｣
｢あはは…｣
無事はなまるをもぎ取った渚が苦笑する。ビッチ先生のことだから一般教養として名作小説くらい読んでいると思うが、こんな問題出るなんて予想できるはずがない。
しかし、英語を教えるのはビッチ先生だけではない。ビッチ先生は半分を受け持ち、もう半分を教えるタコがいる。
｢先生、こういう繊細な反逆にあこがれてましてねぇ。ぜひ2か国語で読んでください。君達の年頃ならキュンキュン来るはずです｣
…なんてほざいて、他の皆にも配っていたな。
｢外国で良い友達いなかったっしょ、瀬尾クン。やたら熱心に本を薦めるタコとかさ｣
ー理科ー
｢そォ〜らッ！！｣
記憶の鬼と詠われているだけある。攻撃力が半端ない。
｢おいケツアゴォ！ 調子悪そーじゃん｣
いたずらに声をかけてみた。頭の装甲が剥がせないでいるところ、神経を逆撫でるのは気持ちいい。特に、相手が不愉快な野郎なら。
｢なんだとッ…！ …は？｣
こちらを振り向く。しかし、その視線は私でもなく、私が倒した問題でもなく、その先の…
｢それでねー｣
｢わかるー｣
ズゥン…ズゥン…という足音には不釣り合いな顔をした問題と奥田が、軽快なコミュニケーションを繰り広げている。
｢本当の理科は暗記だけじゃ楽しくないです｣
そう彼女は言う。
｢『君が君である理由を理解ってるよ』って、ちゃんと言葉にして伝えてあげたら、この理科すっごく喜ぶんです｣
ぬぎっ
たったっ
問題は残りの甲冑を脱ぎ捨てると、奥田と共に走り去った。
｢…｣
奥田は満足している。しかし、その後ろ姿になんとなく納得できない。
ー社会ー
毒舌アナウンサーは唖然としている。ひび割れたメガネはずり下がり、大きなカルデラの中だ。
首相会談の回数、何とも常識外れな問題だ。
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
