襲来6 ページ17
その言葉に腹を押さえながらニヤリと笑う寺坂。
｢吉田！ 村松！！ おまえらは飛び降りれんだろ、そこから！！｣
｢はァ！？｣
こんなときだが、村松と吉田の息のあった返答に感心した。
｢水だよ、水！！ デケーの頼むぜ！！｣
その意図を察した2人は
｢しょーがねーなぁ…｣
岩から手を離し、思いっきり蹴った。
｢ま、まずい！！｣
漸く事態を飲み込んだシロにカルマが言う。
｢殺せんせーと弱点一緒なんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ｣
その手には爆破を操作するリモコン。
ザザンッ
クラスメイトたちが村松や吉田と同じように飛び降りる。ちなみに、私もその中に混じっている。そのタイミングに合わせてリモコンのスイッチが押された。
イトナの触手が膨れ上がる。
｢殺せんせーと同(おんな)じ水、たっぷり吸ったね。ハンデもクソもないや｣
シロはあの声も出ないらしい。
｢で、どーすんの？ 俺等も賞金持ってかれんの嫌だし｣
｢金かよ。その前に死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてんの。…まだ続けんなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど？｣
クラスメイトたちは各々水かけの体勢に。私の手にも、あちこちに仕掛けた爆薬を発動させるリモコンが握られている。
｢…してやられたな。丁寧に積み上げた戦略が…たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった｣
その声からは諦念が読み取れた。
｢…ここは引こう。帰るよ、イトナ｣
踵を返したシロだった。
｢しっぽ巻いて逃げるのは結構だけど、イトナ闘志メラメラだよ？｣
｢イトナ！！｣
揶揄うとそれに気づいたシロが怒鳴りつける。
｢どうです、皆で楽しそうな学級でしょう｣
膨れた殺せんせーが言ったがイトナは
｢…フン｣
とだけ言ってシロの後を追った。辺りからは安堵の声。
｢そーいや寺坂君。さっき私の事さんざん言ってたね。ヘヴィだとか、ふとましいとか｣
それが一瞬で険悪な空気に。寺坂は必死に取り繕う。原は更に激高した。
｢あーあ、ほんと無神経だよな。そんなんだから人の手の平で転がされんだよ｣
それに高みから笑う男1人。当たり前だが、カルマである。その嘲笑にイラついた寺坂はカルマの胸倉を掴み、制服姿の彼を水の中に引きずり込んだ。
｢はぁァ！？ 何すんだよ、上司に向かって｣
｢誰が上司だ！！ 触手を生身で受けさせるイカれた上司がどこにいる！！ 大体テメーは、サボり魔のくせにオイシイ場面は持っていきやがって！！｣
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
