襲来2 ページ13
寺坂を尾行(つ)けていく。ちなみに今は既に休み時間に入っている。
｢うお、マジかよ殺せんせー！？｣
荒れている寺坂が見つけたのは、吉田の声がする教室。彼は迷いなく扉を開いた。
｢…何してんだよ、吉田｣
｢あ、寺坂｣
私もこっそり教室に入り、近くにいた不破に状況を尋ねた。殺せんせーがプールの廃材でバイクを作ったと。生粋のバイク好き･吉田はそれに大興奮。
｢ヌルフフフ、先生は大人な上に漢の中の漢。この手の趣味もひととおり齧ってます。しかも、このバイク最高時速300kmも出るんですって。1度乗ってみたいモンです｣
｢アホか。抱きかかえて飛んだ方が速えだろ｣
笑い声に包まれる。なんともアットホームか雰囲気だ。それは当然、逆鱗に触れる。
バキィッ
｢にゅやーッ！！？｣
寺坂はバイクを蹴り倒した。木材でできたそれは当然壊れ、殺せんせーは悲鳴をあげる。
｢何てことすんだよ、寺坂！！｣
｢大人な上に漢の中の漢の殺せんせー泣いてるよ！？｣
ブーイングの嵐。個人的にはバイクが壊れたことよりも｢大人な上に漢の中の漢｣が泣いたことが気になる。
そんなことはさておき、寺坂は机の中から何かを取り出した。
｢…てめーら、ブンブンうるせーな。虫みたいに。駆除してやるよ｣
それの形状や発言から殺虫剤と思われた。寺坂はそれを振りかざす。スプレー缶は床に叩きつけられ、盛大に煙を発した。
｢うわっ！！｣
｢何だコレ｣
あがる悲鳴。
｢寺坂君！！ ヤンチャするにも限度ってものが…｣
｢さわんじゃねーよ、モンスター｣
寺坂は舌の動きを止めない。
｢気持ちわりーんだよ。テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組も｣
寺坂はカルマと一悶着起こしてから出ていった。しかし、私の意識はそんなところには向いていない。
｢ケホケホ…この匂い、ホントに殺虫剤？｣
｢あ？｣
吉田が独り言に気づいたらしく水を向けた。
｢殺虫剤はほとんどがピレスロイド系のはず…ほら、成分表示されてる。でもこの匂いは多分違うよ｣
｢…｣
難しい、とでも言いたげな顔だ。奥田や竹林辺りなら理解してくれるかもしれないが。
胸騒ぎだ。これから一波乱あるだろう。
翌朝、プールにやって来た。何も泳ぐためではない。気がかりなのだ。
｢何もないか…｣
元々何もないのかもしれない。しかし、私の勘は｢ただごとではない｣と主張する。それなら、自分が納得いくまで調べるしかないだろう。
｢ん？｣
見つけてしまった。
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
