教官4 ページ2
｢やめろ、鷹岡！｣
烏間先生が走ってきた。いの一番に前原と神崎を心配した。
｢ちゃんと手加減してるさ、烏間。大事な俺の家族だ、当然だろ｣
｢いいや｣
そう笑う鷹岡先生。次にやってきたのは
｢あなたの家族じゃない、私の生徒です｣
｢殺せんせー！｣
珍しいまでに生徒想いの担任だ、表情は保っているが怒りの影がチラつく。
｢フン。文句があるのか、モンスター？ 今の罰も立派に教育の範囲内だ｣
鷹岡先生は続ける。
｢おまえを殺す暗殺者を育てるんだぜ、厳しくなるのは当然だろう。多少教育論が違うだけで…おまえに危害を加えてない男を攻撃するのか？｣
鷹岡先生は不敵に笑って見せた。クラスメイトたちの顔にも“不満”が浮かぶ。
しかし、言っていることはギリギリ正論。殺せんせーと烏間先生は引き下がる他なく、地獄のスクワットが始まった。今は三村が叱責されている。
耳を澄ませてみると、
｢じょっ…冗談じゃねぇ…｣
｢死んじまうよ…｣
息も途切れ途切れ。その中に
｢烏間先生〜…｣
という声も混じっていた。それが気に食わなかったらしく、声の主…倉橋に鷹岡先生は言った。
｢おい、烏間は俺達家族の一員じゃないぞ。おしおきだなぁ…｣
怯える倉橋に殴り掛かる鷹岡先生。しかし、先程から近寄る気配。
ガシッ
｢それ以上…生徒達に手荒くするな｣
｢烏間先生！！｣
嫌な汗の中に笑顔が戻る。鷹岡先生の表情は曇るが、想定内といった感じだった。
鷹岡先生は言う。対決るならあくまで教師としてだ、と。そして懐から取り出したのは
｢…ナイフ？｣
｢おまえが育てた、狐以外の中でイチオシの生徒を選べ。1度でもナイフを当てられたら…おまえの教育は優れていたのだと認めよう｣
つまりこういうことだ。
私以外の生徒が鷹岡先生を殺れたら、出ていく…と。
｢ただしもちろん、俺が勝てば口出しはさせないし…｣
何やら不穏な空気を纏う手を鞄に突っ込み、取り出したのは…
｢殺す相手が人間なんだ、使う刃物も本物じゃなくちゃなァ｣
無理だ。烏間先生はあくまで超生物を殺す集団を育ててきたのだ。素人がそんなものを持って勝てるとは思えない。
｢ひとり選べよ！！ 嫌なら無条件で俺に服従だ！！｣
高笑う鷹岡先生。烏間先生を見ると、地面のナイフを抜きながら汗を流していた。
どうするか。私は考えた。
｢あ…｣
考えたところで思い浮かんだ“殺される感覚”。
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作者名：京陽 | 作成日時：2019年12月2日 11時
