ヒューマンバグ大学短編集５ (ページ10)

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鬼ごっこ　伊武　甘々ページ10

*黒澤派夢主
*内部抗争中

「い、伊武の兄貴のバーカ！馬鹿力！変な顔！」

「お前ちょっとこっち来るといいねぇ」

Aがこの抗争に消極的なのは黒澤も周知していた

こんな状況とはいえシノギは疎かに出来ない。だから黒澤は
あくまでそれに集中しろと指示を出していたのだが……

「人の顔を見るなり悪口なんて羨ましくないねぇぇ！！」

「きゃー！！」

それでも黒澤派の意地を見せたかったのか。Aは思いつく限りの
悪口を言い放った。当然、それを聞いた伊武が黙ってる訳もない

……この鬼ごっこはそんな経緯で始まったのだった

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「うぅっ、伊武の兄貴の変な顔……変な顔」

「それしか言えないのか」

呆気なく捕まったAは路地へ強制的に連れ込まれ、体を
壁にキツく押し付けられている

「何で黒澤派なんだろうな」

「……え？」

「何でもない。それより兄貴分に喧嘩売った罰は何が
　いいだろうねぇ……」

その自慢のリストで締め上げられるのだろうか？それとも
鉄棒で一思いに？

いつ来ると分からない攻撃にAは傍から見ても分かる程に
体を震わせていた

「A」

突如、額に温かな感触が。唖然とするAに伊武は何とも
妖しげな笑みを浮かべる

「次、こんな生意気な真似をしたらここにするから
　覚悟するといいねぇ」

指先がなぞるのはその薄く色付いた唇だ

「分かったなら俺に絡んでないで早く組に行け。
　その守代、届けに行くんだろ？」

そして開放すると伊武は路地を抜けようとする。その時、不意に
振り返り……

「続きがしたかったらいつでも襲いに来ると良いねぇ」

そしてその場を立ち去ったのだった

「……何があったの？」

来栖は顔を赤くして戻って来たAにそう話しかけるも
当の本人は全く反応がない

「く、来栖の兄貴……私、伊武の兄貴に……」

「うん？」

「……ぁぁああ！！伊武の兄貴の変な顔ぉぉ！！」

「ちょ、落ち着きなよ」

脳裏に浮かぶ先程の光景に発狂するAを見て黒澤派が
あらぬ疑いを伊武に向けたのは言うまでもない。そして……

「随分機嫌がいいなぁ伊武。何があったんだ？」

「龍本の兄貴……何でもありませんよ」

そんな事が起きているとは想像していない伊武はただ、ただ
上機嫌だったという

*