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「本当に、強情な奴……!前はもっと素直だったのにな……っ!」
「んんっ!」
「その生意気な態度、来栖の野郎にそっくりじゃねぇか」
「違う!」
「何が違うってんだ!」
やっぱり絆されたんじゃないかと忌々しげに呟くと再び
覆い被さる
「嫌い……月麦の兄貴なんか、嫌いです!」
「んな顔で言われても説得力ないっての」
生憎とそれが嘘である事くらい月麦には分かっている
「暴れんなって。傷がついたらどうすんだ」
せめてもの忠告を無視して肩を押し返そうとする手がいい加減
鬱陶しくなった月麦はいとも簡単に縫い付けてしまう
「来栖の兄貴……っ!!」
「!!」
Aは来栖に助けを求めてしまった
それは少し意識を反らしていれば聞き逃してしまう程に小さく
呟かれたが、タイミングの悪い事に月麦にはハッキリと聞こえて
しまったのだ
「よく他の男の名前なんか口に出来るよな……今、Aに
触れているのは俺だろ」
「も……嫌だ……離して下さい、兄貴……っ!!」
Aを責める資格なんてない事は分かっている。けれども
今更止められる訳がない
「A……っ」
あれだけ近かった距離が今はこんなにも遠くて……汗に混じった
涙がAの頬を濡らすのだった
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「井上の兄貴。そっちにA居ますよね?さっさと
返してもらえますか」
「元々お前のじゃないだろ」
「貴方のでもないですよね」
Aのスマホには何件も来栖から電話が来ていた
ようやく繋がったと思えば出たのがAではなく月麦だった事で
事態を把握した来栖は怒りを隠せずにいる
「そんなに返して欲しかったら奪ってみろよ。出来るものならな」
「舐めとるんすか」
「つーか要件がそれだけなら切るぞ。これ以上お前と話しても
意味ないんだわ」
「まだ話は終わってな……」
来栖との電話を強引に切り、Aに向き直る
「A。お前はもう黒澤派……いや、来栖の元になんか
帰さねぇからな」
涙で瞼がすっかり赤くなっている。寝息を立てる薄い唇に
そっと自分のを重ねた月麦は再び、Aを抱き締めた
「愛してる」
Aが望んでいた囁きは静かに消えていくのだった
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ゆず(プロフ) - 楓さん» お待たせしました! (1月8日 0時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - リクエストありがとうございました🙇♀️ (1月8日 0時) (レス) id: fa3afa321a (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - バイさん» いえいえ!本当なら年内に公開したかったのですが……遅れて申し訳ありません! (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - みはるさん» そんなもったいないお言葉を!ありがとうございます☺️ (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
バイ(プロフ) - リクエストありがとうございます!!やはりゆず様のお話どれも最高です…! (1月4日 12時) (レス) id: 1753987474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2023年8月7日 17時