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*





「……シャワーありがとうございます」


まだ捨ててなかった部屋着が今になって役に立ったのは
何とも皮肉だ


「……」

「もしかしてココアじゃない方が良かった?」

「いや、大丈夫っす」


今度は来栖が困惑する番だった。避けられてる自覚はあったから
こうして不意をつこうとAが帰宅するまでずっと待ち続けた

てっきり帰ってと言われると思ったけれど実際は家の中に入れて
シャワーを貸して温かい飲み物まで用意してくれて……


「期待してもいいんですか」

「あ……っ」

「もう逃げられませんよ。今、俺を家の中に入れたのは
 紛れもなくAさんの意思ですから」


その反応から全くの善意で招き入れたのだとすぐに分かった。
無防備なのか、それとも関係があった故の気の緩みなのか……
いずれにしても来栖を惨めな気持ちにさせるには十分過ぎる

けれどなりふりなんか構っていられない。幾度となく重ねられた
唇に再び触れると来栖はそのままAをソファーへと倒す


「悪いと思ってるなら早く受け入れて下さい。俺は……」


すっかり温まった大きな手のひらが頬を包み込む


「忘れられないんです。どうしようもない程愛しているんです」


まるで馬鹿の一つ覚えだが何度も何度も愛していると伝えるしか
来栖には出来なかった


「もうAさん以外に好きになれる女なんか現れません」

「三成、君」

「どうしてくれるんですか。こんなに俺の心を奪っておきながら
 知らん顔なんて許しませんよ」

「その……」

「Aさんは俺の事が嫌いですか」


それは違う。それだけは誤解されたくない

Aは微かに顔を横に振る。それをみた来栖は幾分表情が
柔らかくなった


「良かった」


Aの首筋に顔を埋めると自分なんかよりも細い体をそっと
抱きしめる


「泊まっていっていいですよね。今、帰ってもまた体
 冷やすと思うんで」

「……いいよ」


あれだけ避けていたのにいざ目の前にすればその温もりが
恋しくなる。離れられないのは自分も同じだった


「……Aさん」


来栖はAの手首を押さえつけると軽い音を立てたまま
唇を寄せる


「待って」

「待てません」

「三成君だけ浴びるなんてズルい……せめて上がってから……」


渋々上から退くとシャワールームへ向かうAの後ろ姿に
思わず笑みが溢れた


「甘ったるいですね」


来栖は自分好みの濃さで作られたココアを飲みながらAが
戻ってくるのを待つのだった




*

獅子王組 井上 リク→←獅子王組 来栖 リク



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設定タグ:ヒューマンバグ大学 , バグ大 , 天羽組   
作品ジャンル:恋愛
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ゆず(プロフ) - 楓さん» お待たせしました! (1月8日 0時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエストありがとうございました🙇‍♀️ (1月8日 0時) (レス) id: fa3afa321a (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - バイさん» いえいえ!本当なら年内に公開したかったのですが……遅れて申し訳ありません! (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - みはるさん» そんなもったいないお言葉を!ありがとうございます☺️ (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
バイ(プロフ) - リクエストありがとうございます!!やはりゆず様のお話どれも最高です…! (1月4日 12時) (レス) id: 1753987474 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2023年8月7日 17時

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