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*東雲side
俺はお世辞にも素行が良いとは言えない。高校時代もそうだった
だが人一倍体格がいい俺に対して上級生どころか教師すら何も文句が
言えなかった。退屈極まりない学校生活を送っていたある日……
「盗難があったんだって」
「嘘!?本当に?」
「絶対東雲でしょ。素行悪いもんね」
学校で財布の盗難騒ぎがあった時、真っ先に俺は疑われた。
ある意味当然とも言える
俺がやっていないと言ったところで誰も信じる訳がない
「東雲君はやってない」
だけど一人だけ俺を庇った人間がいる。A先輩だ
「先生。どうして東雲君を疑うんですか?」
「東雲は素行が悪いだろう!?」
「だからっていきなり犯人扱いするなんてあんまりです!」
結局、その後真犯人は別にいたと判明。元々人なんか信用
出来なかった俺はこの一件で更に孤立する……と思っていた
「竜政。お昼食べよ!」
「うっざ……あっち行って下さい」
良いものは良い、駄目なものは駄目。特別贔屓する事無く
平等に接してくれたA先輩の側はハッキリ言って居心地が
悪かった
結局、その妙な関係性も先輩が卒業するまでの短い期間しか
続かなかったんだけどな
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__________
「A先輩」
「ん……」
動けないのをいい事に俺はその白い肌を散々と貪った。気を失う
ように眠った先輩の顔はあの頃のままだ
「そのまま大人しくしていれば貴方だけは助けてやりますよ」
恩返しなんて俺の柄じゃない。そんな事をする必要なんか全くない。
いつまで経っても俺の気持ちに気が付かないで良い先輩でしか
居てくれなかった貴方の事なんか……俺は……
「竜政……」
「寝言かよ」
きっとこの人の中で俺は未だに手の焼ける後輩、そんな印象
なんだろう
「ん……」
「……」
手首が擦り切れている……こんな状態じゃまともに歩けもしない。
そう思った俺は拘束を解く事にした
「……ごめん、ね……」
「うるせぇ」
こんな事をしても手に入る筈がない。むしろ距離が出来るだけ
なのに何でこんなにも焦がれる気持ちが抑えられないのか俺は
分からなかった
城ヶ崎さんをやった京極組員であるA先輩の事なんか手に
かけてしまえばいいのに……
「愛してますよ。先輩」
矛盾した気持ちに揺れる俺の口からでたその言葉はきっと
あの頃から変わる事なく抱き続けていた紛れもない本音だ
*
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ゆず(プロフ) - 楓さん» お待たせしました! (1月8日 0時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - リクエストありがとうございました🙇♀️ (1月8日 0時) (レス) id: fa3afa321a (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - バイさん» いえいえ!本当なら年内に公開したかったのですが……遅れて申し訳ありません! (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - みはるさん» そんなもったいないお言葉を!ありがとうございます☺️ (1月4日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
バイ(プロフ) - リクエストありがとうございます!!やはりゆず様のお話どれも最高です…! (1月4日 12時) (レス) id: 1753987474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2023年8月7日 17時