ヒューマンバグ大学 短編集４

獅子王組　井上　リク ページ15

*阿蒜side






「月麦ー」


＿＿ワシャワシャ……


「お疲れ様ー」

「やっべぇ！Aの姉貴に頭撫でてて貰えた……超嬉しい！」


俺の名前は阿蒜寛太。目の前で繰り広げられるイチャつきに
目も当てられない新入りだ

そう言えば井上の兄貴の凱旋祝いで龍本の兄貴や伊武の兄貴、
Aの姉貴と飲んだ時……



＿＿新入りの癖にAの姉貴の隣なんていい根性してんなぁ

＿＿おいおい、月麦。阿蒜はお前達の関係を知らねぇんだぞ？

＿＿少しくらい多目に見てやるといいねぇ……



初対面で俳優といっても通じるイケメンにがんを飛ばされるとは
思わなかった俺はあの時、本気で命の危機を感じていた

姉貴も姉貴でどうして言ってくれなかったのかと少しばかり
八つ当たりをしちゃったんだよな……


「俺からもお返しっす」

「わー、髪の毛ぐちゃぐちゃ！何すんのー」


ここ事務所っす。そんなイチャついていたら柳楽の兄貴に
怒られますよ。二人共……


「若いのが仲睦まじく……良い事だ」

「………」


いや、そこはツッコみましょうよ。兄貴が言わなければ
他に誰が言うんですか？


「もー、止めて。髪の毛治すから」


しかし。存外、不器用なAの姉貴は乱れた髪を上手く
整える事が出来ず井上の兄貴にすぐさま助けを求める


「月麦ぃぃ……上手く出来ない」

「しょうがない人ですね。ほら、こっち来て下さい」


何をどうしたらそんなにサラサラになるのだと聞きたくなる
その髪の毛を整えるのは井上の兄貴でも難しかったようで……


「痛っ……引っ張らないでよー……」

「Aの姉貴の髪の毛マジでサラサラ過ぎて逆に
　やり辛いんっすよ！」

「もういいー。解いたままにするから！」


何やら揉め始めたぞ。すると二人はこちらに近づいてくる


「柳楽の兄貴！月麦が髪の毛を引っ張りました！
　懲らしめて下さい！」

「柳楽の兄貴！姉貴が動くから上手く整えてあげられません！
　抑えてて下さい！」


どうしてよりによって柳楽の兄貴に助けを求めるんですか？
そんな事を言われたって兄貴も困る……


「故意ではないとはいえ、女の髪を引っ張るなど言語道断」

「ほらー！やっぱり！今回は月麦が悪いって！」

「そしてお前さんも少し大人しくしていなさい」

「やーい！Aの姉貴怒られましたね！」

「……お前達。静かにしろ」

「「あ、はい」」


目のやり場に困るイチャつきは柳楽の兄貴によってようやく
落ち着きを見せるのだった




*

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