守るべき愛しい子

10　本音と建前 ページ20

*Q&A回答含みます
*玄弥side







俺とAが結婚したのは三國の親父の提案だった


「二人共。結婚してくれんか？」


二人揃って部屋に呼び出され、唐突にそんな事を言われれば
流石に俺も驚く


「実はなぁウチに高額の守代を納める企業の御曹司がAを
　えらく気に入ったみたいで縁談をって話が来てるんや」

「……嫌ですよ。結婚なんて」

「話はちゃんと最後まで聞かなあかんで。まぁ天王寺組としても
　Aにいなくなられたら困るしどうするのが一番ええかなって
　考えとってな」


カタギのそいつと結婚すれば家庭に入らざるを得ない

天王寺組の女構成員はAしかおらんし、そうなれば
潜入捜査が出来る人間がいなくなる


「理由も無しに断れんって事ですか」

「戸狩の言う通りや。逆に言えば理由さえ出来ればお互いに
　失うもんも無く丸く収まる」

「……そんな理由で結婚しないといけないんですか」


震える声で問いかけるAに三國の親父は申し訳無さそうに答える


「……結婚してしまえばあとはどうなろうと二人の勝手や。
　今は我慢してくれんか？」


組の名前を守る為に我慢を強いるなんて親父も本意ではない筈。
せやけど……


「分かりました」


「戸狩の兄貴……！？」


そこに自分の意志なんかないと分かったAのこの時の表情は
今でも忘れられん






「何であんな話を受け入れたんですか！？」

「断る訳にもいかんやろ」


そんな話があってから俺達は言い争いが絶えんようになった。
見かねた組員が間に入る事もある程にAは俺を拒絶して……


「……嫌い。戸狩の兄貴なんか嫌い！！」


せやけど俺は何を言われようとAを守る義務がある。俺に
とったら思ってもいなかった機会や


「俺の妻になってくれ。頼む」

「………」


おっちゃんとおばちゃんとの約束を今度こそ果たさなあかん


「……信じてたのに」

「え？」

「戸狩の兄貴だけは……違うって思ってた、のに」




形だけの結婚。それはAが組に来てから一年が過ぎた頃の
話やった




*

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