・ ページ44
*
その心地良い声が聞こえなくなり、秋月家の屋敷は再び
静寂に包まれるようになった
「まさかAがモーリーの仲間だったとはな……」
こんな屈辱を味わったのはいつ以来の事か
「申し訳ありません。この紫電、一生の不覚でございます」
「詫びなど無駄な事をするのは止めろ。惨めになる」
そう。心を許してしまったのは他でもない秋月自身なのだから
「紫電。Aは私との契約を一方的に反故にした」
「はい」
「契約不履行に対するペナルティが必要だとは思わないか?」
淡々と告げる秋月に紫電はすぐさまその意図を読み取った
「必ず連れ戻して参ります」
「………必ずだぞ」
________________
____________
「A……」
__美味しいですよね?
この自分に無理やり菓子を突っ込むという暴挙に出たAの
名前を呼ぶその声は何とも悲しげだった
最初こそ主人である秋月の寵愛を受けるべく媚を売る女と思って
いたけれど何も見返りを求めず懸命に働くその姿に関心を覚え、
正式に雇うと聞いた時は少し心を弾ませたのを今でも忘れない
いや、忘れないのではなく忘れられないのだ
「………」
我欲を捨て、主人に尽くす。その生き方に疑問を持った事など
無かった筈なのに
「鵺一族の者よ。貴様もこんな気持ちだったのか?」
同じ忍である鵺一族もまるで感情など持ち合わせておらず、
主人に尽くす事のみが存在意義なのだと噂に聞いていた
……憎い、憎い。要らぬ感情を思い出させたAも自分と同じ
忍の癖に自らの意志で動く鵺も、何もかもが憎い
「秋月様はAを連れ戻す事を望まれている……ならば
それが我の望み」
いつまでの鼻に付く甘い残り香に浸っている暇などあるものか。
紫電は主人である秋月の望みを叶えるべく、その場を後にした
*
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» 可能性大です!天王寺組に限らず他の組やヴィラン組シリーズも書きたいです!可哀想な陣内さん🤣 (1月25日 16時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» では惜しくも出番のなかった渋谷さんたちも、第二弾では登場の可能性あり…?!なのですね😳中でも今回はラストで一蹴された陣内さんのオチが好きでした! (1月25日 10時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» ありがとうございました!第二弾でもこんな感じの作品を公開して評判があれば長編へ昇格……と考えています☺️ (1月25日 10時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - 天王寺組姉さんの日常編、読んでいて楽しかったです!✨ (1月25日 10時) (レス) @page49 id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» わお😳朗報です✨ (9月21日 0時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2023年6月3日 22時