検索窓
今日:13 hit、昨日:52 hit、合計:31,039 hit

ページ41

*紫電side






パーティーの前準備として派遣を依頼した清掃業者の一人を
秋月様はたいそう気に入られた

確かにその働きぶりには何も問題はないが、だからこそ我は
この女が怪しいと思ってしまったのだ





「Aは本当によく働く。そう思うだろう紫電」

「はい」


秋月様はハッキリとは口にしないがこの女を気に入ったのは
その働きぶりと言うより本人自身を気に入ったからだろう

その富や名声にあやかろうとする輩を今まで多く見てきた。
だからこそ何の対価も求めないその無欲さが一層輝いて
見えたのかも知れない……いや、絶対にそうだ


「紫電さん」

「何だ」

「……そんなに見られると掃除しにくいのですが」


無意識だった


「すまない」

「疲れているのですか?」

「何の話だ」

「表情があまりその……優れないように見えます」

「元からだ」


こうして気兼ねなく誰かと会話をするのも久しい。何故か
分からないがこのか細い声で名前を呼ばれると調子が狂う


「紫電さん?」

「………」

「あの、近いです」


あどけなさが残るこの顔が頬を赤らめたらどうなるのだろうか?
柔らかくて甘い香りの肌に触れる事が出来たら……


「……紫電さん」


意識が戻ったのは再度、名前を呼ばれた時だった


「離してもらえませんか?」


少し加減を間違えれば折れてしまいそうな細い腕をどうやら
掴んでいたようだ。だが離し難い


「悪い」

「えっと……次は中庭の落ち葉を片付けて」


__ガッ!


「足元には気をつけろ」


何故何もない所で躓く?


「怪我はないか」

「紫電さんのおかげで何とか……ありがとうございます」


ありがとう、か。当然の事をして感謝されるなんていつ以来だ?
もう随分と昔なのかも知れない


「……そう言えば先日、秋月様は君をこの屋敷の専属に雇いたいと
 希望されていた」


何故だかこのタイミングで秋月様がそのような事を仰って
いた事を思い出した

随分と面を食らった表情をしているが我も最初に聞いた時、
もしかしたら似たような表情をしていたかもしれん


「……専属ですか」

「まだ契約期間は残ってる。それまでに返事をするように」


決めるのはこの子だが、もし本当に雇われたらそれはそれで
良いのかも知れない





*

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
64人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆず(プロフ) - ぷるんさん» 可能性大です!天王寺組に限らず他の組やヴィラン組シリーズも書きたいです!可哀想な陣内さん🤣 (1月25日 16時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» では惜しくも出番のなかった渋谷さんたちも、第二弾では登場の可能性あり…?!なのですね😳中でも今回はラストで一蹴された陣内さんのオチが好きでした! (1月25日 10時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» ありがとうございました!第二弾でもこんな感じの作品を公開して評判があれば長編へ昇格……と考えています☺️ (1月25日 10時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - 天王寺組姉さんの日常編、読んでいて楽しかったです!✨ (1月25日 10時) (レス) @page49 id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» わお😳朗報です✨ (9月21日 0時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆず | 作成日時:2023年6月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。