・ ページ36
*
いい事なんてそうそう続くわけがない
「Aちゃん、追加オーダーいいかなぁ」
わざわざ手を握って呼び止めるこの男。ここ最近、Aに
やたら絡んでくる迷惑客だ
「(今日も英明さん来てないし……)」
何より気分を落ち込ませているのは国生が暫くの間
店に来ていない事だった
でも良かったかもしれない。こんな場面を見せて心配を
させる位なら……
「どうぞ」
ここは気丈に振る舞うしかない。内心は嫌だなと思いつつも
Aは笑顔だけは絶やす事はなかった
「本当に可愛いねぇ」
「……」
その薄ら笑みに気味の悪さを覚えているのはAだけでなく
オーナーや他の従業員も同じ。だが、この喫茶店は男性の
店員がいない
男もそれが分かっているからかこうした真似を堂々と
やっているという訳だ
__カラン、カラン
「いらっしゃいま……あっ」
「久し振りだなAさん」
なんというタイミングで来たのか。国生はいつもの席へ向かう
……と思ったら二人の間に割って入るように立ち塞がった
「Aさんを困らせるのは止めろ」
「な……オッサン何様のつもりだ!?俺はAちゃんと」
「ボウヤこそ何様のつもりでこんな事をしているんだ。
店の迷惑になってるのがどうして分からない?」
こんなにも怒っている国生を初めて見たAは呆然と立ち尽くし
その行方をただ見ているだけしか出来なかった
「今日食べた分の支払いはしてやるから出ていってくれ。
せっかくの美味いコーヒーが台無しになるだろう」
悪い意味で注目を浴びた男はバツが悪くなったのか顔を
赤くしながら乱暴に扉を閉め、店を後にした
「せっかくの客を逃がして悪かったな」
「そんな!英明さ……あ、あのお客様が気にされる事では」
「いつも通り呼べば良い」
すると奥からオーナーが出てくる
「相手が男だから分からなくもないが従業員を守るのも
オーナーの務めだろう」
「す、すみませんでした!Aちゃんもごめんね」
「いえ……大丈夫です」
「警察には相談したのか?あの感じ初めてに見えないが」
「実はもう何日も前からなんです。最初はただ見るだけ
だったのに最近は……」
「オーナー、それは言わないって……!」
ちらりと覗いた国生の顔は怒っているとも悲しそうとも言える
複雑な表情を浮かべているのだった
*
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» 可能性大です!天王寺組に限らず他の組やヴィラン組シリーズも書きたいです!可哀想な陣内さん🤣 (1月25日 16時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» では惜しくも出番のなかった渋谷さんたちも、第二弾では登場の可能性あり…?!なのですね😳中でも今回はラストで一蹴された陣内さんのオチが好きでした! (1月25日 10時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» ありがとうございました!第二弾でもこんな感じの作品を公開して評判があれば長編へ昇格……と考えています☺️ (1月25日 10時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - 天王寺組姉さんの日常編、読んでいて楽しかったです!✨ (1月25日 10時) (レス) @page49 id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» わお😳朗報です✨ (9月21日 0時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2023年6月3日 22時