、 ページ33
「あんたは、そっちを見限ったんやろ。じゃあ、怖いこともないやんか。
寧ろ、敵に投降しないからこのザマだ、ってわらってやったらええんじゃないですか。」
それくらいの覚悟で、心臓渡してないんですか？
瓶底レンズの奥の瞳は、笑っておらず、なんの感情も持っていなかった。
Aの鼓動が早まっていく。
想像できる、β国からの言葉を脳内が反芻していく。
息がしにくい。
涙があふれるAの目を、チーノはハンカチで適当に拭いた。
「俺は、貴方が覚悟できてるなら。ここにいていいんじゃないかって思います。」
初日の会議室。
一切自身の意見を、述べなかったチーノが初めて、本音を漏らした。
「三十分。時間をあげます。その間なら、吐いても泣いても喚いても。俺は許します。
最後の覚悟を決めてください。」
そう言って、チーノは袋を持ってきて、Aに手渡した。
あの日のように、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、
『ありがとうございまず......。』
と礼を述べる。
コネシマが連れていた、元盗賊のしていた事まで思い出し、盛大に吐いた。
喉が焼けるように熱い。
チーノは黙ってそれを見ていたが、何を思ったのか、キッチンへ向かった。
『やだ、なん゛で、来るの......。』
Aの脳内で、血に塗れ、中身が飛び出している、人だったものが追いかけてくる。
『皆弱かったから、仕方ないじゃない。私も、部下も同僚も、お母様も。』
胃の中からどろどろとしたものが、こみ上げる。
一通り、泣いて、吐いて、喚いて落ち着いたあと、チーノがコップを差し出した。
「思ってたより、早かったですね。」
涙に濡れた顔を上げて、Aは時計を見た。
針は、泣き始めたときから、九十度動いていた。
コップの水を、口の中でゆすぎながら、飲み込む。
中身がなくなった頃、Aの表情は、元の顔に戻っていた。
「行きますよ。」
『はい。』
腹の底から出したには、小さすぎる声だったが、Aの顔は覚悟を決めていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
2(プロフ) - 蠱毒さん» 大丈夫です！わざわざありがとうございます( . .)" (4月1日 23時) (
レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
蠱毒(プロフ) - 2さん» ありがとうございます。そう言って、いただけて嬉しいです！こみゅーのメッセージの方にパスワードを送っても宜しいでしょうか？ (4月1日 9時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
2(プロフ) - 面白くて続きが凄く気になるのですがパスワードが掛かってて続きを見れません💦良かったら教えてくれませんか？ (4月1日 2時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - とても面白かったです！続きが読みたいのですがパスワードが…教えて貰えないでしょうか、、 (1月11日 1時) (レス) @page50 id: f664205a1a (このIDを非表示/違反報告)
こがしアイス(プロフ) - インクさん» さあ、どうなるのでしょう。続編も是非、お楽しみください。 (2022年8月12日 23時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蠱毒 | 作者ホームページ：@kodomikodoku
作成日時：2022年8月7日 18時
