全ては君でした ．【Ryo.Hashimoto】

All you 30 . ページ31

あの後

舞花とは今まで通りに戻った … 筈 。





私も謝ったし

彼女も謝ってくれた ．



ただ変わったのは 、井上だった 。





少しぎこちなくて 。






.









ガコン





前に井上に会えた自販機で


あの炭酸を買った ．




もし奇跡があるなら 、なんて思ったから 。








" 瑞稀くん 、


やっぱ改めて好きになっちゃった 。"






勝ち目のない恋 ．





橋本は毎回こんな辛かったのかな 。







私も瑞稀って呼びたかったな ．




瑞稀 。






「 み … ずき 。 」




言葉に出してみると何だか恥ずかしくて



自分に苦笑いしちゃって ．




帰ろうとした 、その時 、





「 呼んだ ？ 」






まさかの声に ビク と振り返れば



会いたかったその人だった ．






「 ご 、ごめん 。 」




まさか聞かれてたなんて、恥ずかしい。





焦って謝ると


少し不機嫌そうに顔を歪ませた ．





「 ねえ 、


はしもっちゃんのことなんて呼んでる？ 」




「 え 、涼 ． 」


「 優斗は？ 」


「 優斗 だけど … 。 」






「 なら 、いいじゃん 。



呼んでよ 、瑞稀って 。 」



自分で言ってるのに


井上の耳は少し赤くて 、


目も少し逸らして照れくさそうにしてて ．






何だか笑ってしまう ．





「 瑞稀 。 」




す 、と呼べた名前は



さっきより心地よくて 。






目の前の彼も


嬉しそうにはにかむ 。




「 何 ？ A 。 」




わ 、ムズ痒い 。


なんだか照れちゃうな 。






「 てか 、ここまで長い 。


舞花でさえ下の名前なのに 。 」


「 いや 、


私 、苗字呼び捨てがスタンスだもん 。 」



「 早く言っときゃ良かった 。


井上 、より瑞稀がいい 。 」


「 あ 、拗ねてた？ あれ ？ 笑 」


「 は 、うっせ … ｯ 。 」




あの気まずさが嘘のようなのに



「 Aさん 。 」





階段の上で声の主へ振り向けば


爽やかに笑う那須だった ．






「 久々にやっと会えました 。」



「 LINEしてるでしょ？笑 」


「 やっぱ直接会いたくて 。



… あ 、井上瑞稀先輩 、ですか ？ 」





「 そう … だけど 。 」



「 へえ … 、貴方が 。 」




「 Aさんと 、仲良いんだ 。


少し嫉妬しちゃいますね 。 」




「 ちょっと那須 ！！ 」



訳が分からないような


でもしっかりと那須を見つめる瑞稀 。




それでもまた


「 ふふ、面白くなりましたね 。 」





そう 、また不敵に笑うんだ 。

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