12 ページ13
行くぞ！と高く上げてパスを出され、軽い足取りでボールを取りに行く。ボールを取ると、ふと違和感を感じた。
数回リフティングをした後、円堂に返す。
「すっげぇ、ピンポイントだ！今のリフティングも……大神、上手いじゃないか！」
『……なんだろう、なんだ？』
サッカーボールを蹴ったことがある、円堂とではなく他の誰かと……だが、円堂以外の人間とサッカーをした記憶はない。
「大神？」
パスに反応しない自分を不思議がったようで、円堂から声をかけられる。
『あ、ごめんよ。』
直ぐにボールに追いついた。焦ってリフトアップしてしまったため、若干強めに蹴ってしまう。
「おわ？！」
『ッご、ごめん！』
「いーや、大丈夫だ！！！」
足よりキャッチする方が良いと判断したのか、走りながらグローブを付けた円堂は、ボールを追い越して腕を前に構える。
「……！！」
初心者のボールだ、円堂が触れた途端に動きを止める。その手に収めたボールを見つめたまま、円堂は黙ってしまった。
『……円堂？』
「……お前のボール、すっげぇ！！」
『え、えぇ……？』
凄い凄いとはしゃぐ円堂に着いていけず、フラフラと円堂に近寄る。自身の手が円堂の肩に触れようのした瞬間、その手はいつの間にか円堂の手に納まっていた。
「なぁ、これからここで会ったらサッカーしようぜ！なぁ、いいだろ？！駄目か？！」
『うわっ……！え、いいけれど……』
ぶんぶんと上下に手が振られ、輝いた目と目が合った。
『……ここで会ったらだよ。』
「ぃやった〜！約束だぞ、絶対だからな！！」
それじゃあ続けるぞ！と走って距離を離す円堂の背中を眺める。
『……円堂、また僕の手を取ってくれるのか。』
昔、父の圧力に押し潰されて壊れかけた時期がある。そんな時、円堂は父の言葉をものともせずに手を差し伸べてくれた。
あの手に、あの子の言葉に、どれだけ救われたことか。
「行くぞ！」
『……いいよ、おいで！』
円堂の着ているジャージを見て、先日見た雷門中学校の資料を思い出す。雷門中学校は自分が通う学校で、学校に行けば毎日会うことができるようになる。
『……これはまだ、秘密にしておこうかな。』
今度は君と同じ制服で、また君と同じ帰路を歩けるよ───円堂。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鷹羽 | 作成日時：2021年2月18日 2時
