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気がつけば既に夕焼けが見えて、子供たちは帰ろうとベンチの周りに集まっていた。楽しそうな声に、思わずこちらも笑ってしまう。
『元気だなぁ。』
自分も、あの子達のようにもう一度走りたいと強く願った。リハビリを続けて、もっと速く走りたいと。
「じゃあな！」
バンダナの少年───円堂守が子供たちを見送り、ゆっくりと階段に近づいてくる。自分はただ、彼が上がってくるのを待った。
『やぁ、円堂。』
「……え？」
ついに、階段から上がってきた円堂と鉢合わせる。身長は自分より少し高くなっていて、目線を少し上げると目が合った。
途端、円堂は肩を震わせて口を鯉のように開閉する。しばらくして落ち着いたらしく、グローブを取った硬い手が肩に触れた。
「お前、大神？」
『……大きくなったなぁ。』
自分の記憶に残っている円堂は、もっと幼い子供の円堂だ。仕草も表情も何1つ変わっていないのに、成長した彼を見ると本当に3年もの月日が経ったのだと嫌でも理解した。
「大神だよな、お前今まで何処に行ってたんだよ！」
『……？』
予想外の訴えに困惑する。記憶のない3年間、幼馴染である彼となら頻繁に会っていたのではないかと思っていた。
彼の反応を見る限り、そうではないらしい。
「お前の父ちゃんに何処の病院か聞いても教えてくれないし、学校に来ないし……すっげぇ心配したんだぜ、俺も風丸も！」
あと東！とついでのように、３人目の幼馴染を付け足した。
『……ごめん。』
肩を掴んでいる彼の手に、自分の手を重ねる。昔よりも成長して、少し骨張った手。肩を掴んでいる手の力が緩まった。
「……でも、良かった。良くなったんだな、身体。会えて嬉しいぞ、大神！」
『こちらこそ、会えて光栄だね。』
円堂は肩から手を一旦離して、首に腕を回した。肩を組むように引き寄せられると、無論彼の方が背が高いので上から押し潰されそうになる。何とか耐えて文句を言ってやろうと口を開いたが、嬉しそうな顔に口を結んだ。
「それで、本当に3年間何処の病院にいたんだよ。連絡くらいくれてもよかっただろ。」
『うーん、それがねぇ……』
彼は鈍感なので、嘘をついてもバレはしないだろう。話すか否か迷いはしたが、幼馴染をここまで心配させてしまったのだ。それに嘘は後が面倒だ、いつボロが出るか分からない。嘘くさい話ではあるが、無理に作り話をするよりかは良い。記憶が無いことを素直に話す事にした。
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作者名：鷹羽 | 作成日時：2021年2月18日 2時
