橙に消えていく ページ19
再び目を開く。そこは何の変哲もない緒の丘だ。
アマゾナイトという宝石など居らず、言葉だって交えていない。
そう、あれは全て夢だったのだ。
「クリソコラー、おはよ。」
青緑の声が後ろから聞こえる。
アマゾナイトの声は、もうしない。
「ああ…寝てる時にずっといたのか?」
未だはっきりしない脳を覚ます為に頬を優しく叩き、目を擦る。
1つ欠伸をして、その場に立ち上がった。
「いいや、少し前から。ずっとってほどではないね。」
そうか、一言返す。
すっかり太陽は顔を半分海へと沈めていた。
海は橙色に染まり、草花は眠りの準備をする。
眠った時は太陽が高く昇っていたのだが。一体どれほど眠っていたのだろう。
「さ、戻ろ。」
青緑が、微笑んで言う。
「そうだな、戻ろう。」
ゆっくりと、学校に向けて歩きだした。
一歩、一歩進むごとに夢の中の儚い住人は記憶から姿を消していく。
誰の記憶にも残らない空青は、薄浅葱の中で次の時まで眠り続けるのだ。
1人で、ずっと。
二人の影は、空を照らす橙色へと吸い込まれていった。
___
「見回りどうだった?」
学校内を歩いていると、隣を歩く青緑からそう聞かれる。
見回りといってもただ俺は眠っているだったかんだよな。
「まぁまぁ。」
どう言えばいいのかわからず、適当にそう言う。
そっか、とだけ青緑は返してきた。
「まぁクリソコラずっと寝てたっぽいもんね〜!」
「っ、るっせぇ!」
ニヤニヤと笑う青緑の顔は殴りたくもなるが、昔のこいつを思い出して少し安心する。
思わずこちらも、軽く微笑んでしまった。
「…? 眠気でおかしくなった…? 大丈夫…?」
真剣に心配しているような顔でそう言われるものだから、こちらも反応に困る。
確かにこっちも眠気でどうにかなりそうなのは事実だ。
もう今日の仕事は終わったし眠ったっていいだろう、少し早いが。
「あー確かに眠いんだわ。と言う事で眠らせてもらう。またな青緑。」
おっけー、と返ってきた返事を耳に入れ手を振りながら自室へと速足で歩き始める。
久々に安眠できそうな予感がするな。
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作者名:兀 | 作成日時:2018年6月3日 20時