春が来て、雪は散る ページ17
「ダイヤ。青緑は？」
学校に入って一通り見てみたものの、青緑の姿はなく、仕方なく近くに居たダイヤへと問いかける。
「フォス？ フォスなら外に逃げて行ったわね…。」
しまった、入れ違いしたか。
それにしても、逃げて行ったとはどういう事だろうか。
「逃げて行った…って。」
「皆フォスの腕が気になったんでしょうね〜、それでフォス逃げてっちゃって…」
ダイヤが苦笑いを浮かべる。
まぁ特に青緑に用があった訳では無い、このまま放っておいても大丈夫というか、別に俺には関係が無いだろう。
「それにしてもクリソコラ目が覚めたのね、よかったー！ 起きないんじゃないかって皆心配してたのよー！」
そうか、ダイヤと会うのは久方ぶりか。
と。今更その事を思い出す。
久しぶり、と返しては軽く微笑む。
風が俺とダイヤの間を通り抜け、どこかへと消えていく。
「そうだ、ルチルのところに顔出したらどう？
「あぁ、確かにそれがいいな。わかった、行ってみる。」
バイバーイ、そう呑気に手を振るダイヤに向けてこちらも手を振り返しながらルチルのところへと早足で向かい始めた。
＿＿
「ルチル、どうだ？ 接着具合とかは。」
首元のアマゾナイトを見せながら、ルチルへと問いかける。
ルチルはうーん、と唸りながら首元のアマゾナイトに触れたりしていた。
「かなり自然にくっついてます、ここまで自然にくっつくのはかなり稀ですね。」
自然にくっついてるならいいじゃないか、と返す。
それでもルチルは唸るのをやめはしない。
一体どこが問題なのだろう。
「最近、変な声が聞こえたりは？」
突然なんだ、とは思いながらもここは答えるべきかと思い最近そんな経験がないか記憶の棚を漁り始める。
あぁ、そういえばこの前、冬に新型の月人が現れて落下していく時に何か声が聞こえたな、と。
そんな事を思い出した。
「あるな、冬に一回。」
「元々、あのアマゾナイトはなりそこない。なりそこなったアマゾナイトの人格があなたとくっついて目覚めた可能性があるかもしれないんです。」
じゃなきゃこんなに自然にくっつくのはおかしい、ルチルは言う。
「つまり俺ん中にアマゾナイトが居る、と？」
バカバカしいと思ったし、まだ冬に1回しか話しかけられていない。
それにそんな事、起こるはずもないだろう。
「そんな事ある訳ないだろ。さて、俺は先生に仕事の内容を聞きに行くからまた後で。じゃあな。」
逃げるかのように、その場を去った。
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作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
