おやすみなさい ページ46
「クリソ、コラ。」
もうすぐ、ヒビとヒビのピースが繋がる。
つまり、クリソコラとも皆とも、お別れということだ。寂しさはあるが悔いは無い。またどこかで会えるだろう。
なぜかはわからないが、そんな自信があった。
「…なんだ。」
クリソコラの顔は悲しげに歪んでいた。
俺よりも先に生まれたくせに弱々しくて、儚い顔だ。
「会えてよかった。楽しかったよ。」
頬に、合金が落ちてくる。
薄浅葱の目から垂れてくる合金は、1度落ちてくれば止まることを知らないようで。
その行動が何を意味しているのか、俺にはさっぱりわからない。
「………あぁ、おれも。」
――砕ける。
視界が暗く染まる。
その暗闇は、後悔など含んでいなくて。
ただ、最後までクリソコラとの記憶を思い出せなかったのが心残りだろうか。
いつか、黄昏を背景に。
共に戦える日が来る事を願って。
―――――――――
「お前、変わってみろとか言ったろ。だから、この服にしてみたんだ。」
もう動かないそれに、語りかける。
返事はないとわかっていても、自らの首を締めながら狂ったように語りかけていた。
「変わるってこういう意味じゃないってわかっててもな。」
笑う。
目から溢れ出る合金は、地面を金色に染めていた。
その色は、いつか見た黄昏の空を思い出させる。
「……あぁ、こんな苦しいとは思わなかった。」
痛みは、感じない。
だが胸のあたりがどうも苦しい。粉々に砕け散ってしまいそうになるほど。
「今行く、今行くよ。」
色付いた日々を捨てて、色付いた明日を手に入れる。
死がない我らに、救いはあるのだろうか。
否、きっと救いはあるだろう。だって今俺は、幸せを感じているのだから。
「ばからしい、よなぁ。ほんとう、に。」
――――自分が割れる音を最後に、意識は消えていった。
さようなら、おやすみなさい。
死がない彼等に祝福を。
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作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
