五十三、祭りの後…I ページ3
「随分とまあ、元気な毒見役だことだ」
猫猫に嘔吐薬を渡し、胃の内容物を全て吐かせ終わりぼんやりとしていた中、神出鬼没の暇人宦官が現れた。
宴席からずいぶん離れた場所にいるのによく見つけたものだ。
「ごきげんよう、壬氏さま」
猫猫はいつもどおり無表情で返そうとするが、毒の余韻か幾分頬がゆるい。
笑顔で返したようで少し腹立たしい。
「むしろご機嫌はそっちだろ」
壬氏が猫猫の腕を掴んだ。
「なにするのですか」
「医務室に向かうにきまってるだろ。毒食らってぴんぴんしているなんて洒落にならないぞ」
(このお方は、まだわかってないのだろうか)
猫猫を普通の範疇に置いてはいけないということを。毒と薬に関して、猫猫に常識は通じない。
実際、猫猫は元気そのものである。
それでも星藍も心配になる時はある。
もし猫猫が好奇心に負けて吐き出さずに飲み込んでいたらどうなっただろうか。飲み込んでいるのと飲み込んでいないのでは対処の仕方が変わる。もちろん、飲み込んでいる時の方が対処が難しい。もしかすると対処が間に合わないかもしれない。
河豚毒には解毒薬がない。一歩間違えれば死ぬのだ。
(さっさと吐き出してくれてよかった)
「残りの羹をいただけないでしょうか」
「おまえ、ばかだろ」
「向上心が高いと言ってください」
まあ、ふつう、そんな向上心は願い下げである。
普段、無駄にきらきらしい壬氏だが、今はなんだか違う気がする。
頭には新しい簪が差してあるが、先ほどと変わらぬ上等の衣をつけているのに。いや、少し襟元が乱れている。
甘露の声は幾分かすれ、柔和な笑みもそこにはなかった。
(猫猫のために走って来たのかな)
星藍には何となく理由がわかっていたが、猫猫は全くわかっていないようだった。むしろ失礼なことを考えている顔だ。
「おまえがあんまり元気そうに出ていくもんだから、ほんとに毒かって食べた奴がいたんだよ」
「誰ですか、その莫迦は」
使われたのは河豚毒だったらしい。
それならば食べてしばらくしないと毒の効き目は表れない。
「大臣がしびれてる。あっちはそれで大騒ぎだ」
なるほど、これでは国の未来も危ないことだ。
「せっかくなので、これ使ってもらったらよかったのに」
猫猫が胸元からごそごそと布袋を取り出す。先程星藍が猫猫に渡した嘔吐薬だった。
「胃がひっくり返るほど、よく吐けるように作ったのに」
「いや、それは毒だろ？」
呆れた口調で壬氏はいった。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか？ (12月14日 0時) (
レス) id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
途時(プロフ) - 20051207reiさん» オチはまだ決まっていません。これから決めていこうと思っています。決まり次第お知らせしますので、これからもよろしくお願いします！ (2020年11月7日 19時) (レス) id: 72a10d6769 (このIDを非表示/違反報告)
20051207rei(プロフ) - この話はジン氏×猫猫ですか? それとも星藍でしょうか？教えてくれたら嬉しいです（*｀・ω・*）ゞ (2020年11月7日 3時) (レス) id: 0443befe15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：途時 | 作成日時：2020年11月5日 8時
