嘘 ページ9
嘘
俺、先輩に嘘ついた
俺が先輩初めてみたのは、まだ入学して間もない、初夏のことやった
「コラー！道枝！宿題だせ！」
高校に入って初めての担任は大橋先生。
優しいけど宿題だけには厳しいって有名で、俺は大橋先生と校内中を追いかけっこ中
「明日には出すから！許して！」
「あかん！長尾でも出してるんや！道枝も出せ！」
長尾でも、ってあいつ毎回忘れてんのか
「みっちー、頑張れえ」
ちょうど下校しようとしている長尾を追い越して、
階段を駆け上がって、見つけたちょうどいい隠れ場所は屋上だった
ここまでくれば、もう大橋先生も諦めてくれるやろ、、
ドアの影に隠れて休憩してた時、
先輩を見つけた
バン、と勢いよく開いた屋上のドア
音のした方を見ると、セミロングの髪をなびかせながら女の子が入ってきた
ネクタイが青やから、先輩？
そんな事を考えていれば、走ってきた勢いのままその先輩はフェンスに手をかけていた
「ちょ、え？！待って…」
この人、飛び降りようとしてる？！
止めないと、そう思って立ち上がった
でも、俺の予想とは反対にその先輩は寂しそうに校門の方を見つめていた
「ずっと、好きやったのになぁ」
小さく呟かれた一言で、彼女が何故そんな顔をしているのかが分かった
先輩は一度上を見上げて、溢れ出る涙を拭くこともせず、ただフェンス越しにその"誰か"を見ていた
俺は、先輩から目を離せなくなっていた
夕陽に照らされながら、流れた涙も
あの先輩の目線の先にいた"誰か"も
気になって仕方がなかった
気がつけば、その日から俺は無意識に先輩を探していた
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作者名：蛍 | 作成日時：2020年4月13日 15時
