あの日、あの場所で (ページ7)

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距離感ページ7

「あの、先輩」

とっさに呼ばれて驚きながら振り向けば、さっき目があった彼だった

「これ、落としました」

そう言われて差し出された彼の大きな掌の中には、わたしが身につけていた紫のヘアゴムがあった

それは、小学生の時に恭平がくれたものだった

諦めたはずなのに、まだ無意識にそれを持っていた自分が情けなくて、恥ずかしくて

「それ、よかったらあげる。私には、もう必要無いものになっちゃったから。というか、捨てておいてくれたら嬉しいわ。」

彼は少し戸惑っていたけど、受け取ってくれたようだった

「それじゃ」

一年生の男の子と別れて、靴箱に向かうとまだ恭平と彼女が話し込んでいた

今会うのも気まずいし、ちょっとタイミングずらそう

下駄箱の周りをうろついていると、

「あ」「あ」

さっきの男の子と会った

　

「ハモりましたね」

笑いながら話しかけてきたその子は笑うとまた雰囲気が違ったように見えた

「帰らないんですか」

「ん～そやなあそろそろ帰ろうか」

なんやそれ、彼はくしゃっと笑いながら私の隣へと歩いてきた

触れそうで触れない肩が私の心臓を早める

恭平以外の男の子と話すなんて、いつぶりやろう

「あ、俺、道枝駿佑って言います。自己紹介、してへんかったから」

「道枝くんか、私、三代A。文化祭準備とかでまた会うようになると思うし、そん時はよろしくね」

緊張していること、道枝くんに伝わっているやろうか

私の方が年上やし、ドキドキしてるとか、恥ずかしいなあ

下駄箱までの道が今の私にはとても長く感じた