Hot Coffee_ 《紫》 (ページ17)

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今日も相変わらず1日忙しくして、あっという間に
閉店の時間になる。

丸「そろそろ閉めるかぁ」

『私、外の看板裏返してきますっ』

外に出ると夜になって一層冷たくなった風が
頬を撫でる。

"おーぷん"

と店長の手書きで書かれた看板を裏返して

"くろーず"

に、変えようとしたその時、

濵「あ、もう終わり…ですか？」

聴きたくて堪らなかった声が背後から聞こえる。

振り返ると濵田さんが1人、立っていた。

『えっ、あ、いや、まだ大丈夫です、特別に』

なんて、心の声が漏れてしまって焦る私と

へっ？と抜けた声を出す濵田さん。

何だか場が和んで、2人で笑いながら店内へ入る。

良かったぁ、なんて目が無くなるくらい笑うもんだから
私の胸の鼓動はおさまる事を知らない。

可愛い。

丸「あれっ、濵ちゃん、なんか飲む？」

私が勝手に店に入れたのに嫌な顔ひとつせず接客する店長はやっぱり店長。

その横でもう終わったと思っていた風雅くんは明らかに機嫌が悪い。

ごめんね、風雅くん。

濵「あの…Aさん、」

店内の掃除をしようと思って、濵田さんの横を通り過ぎようとした時、呼び止められた。

『はい、あ、おかわりですか？』

濵「あ、いや、そうじゃなくて…」

濵田さんはまるで子犬のようなきゅるきゅるな瞳で
こちらを伺っている様子。

何か言いたげなのに、なかなか言葉を出さない。

絶妙な緊張が二人の間に走る。

濵「あの、ごめんなさいっ」

『 …んぇ？』

思ってもみなかった言葉に思わず変な声が出る。

『え、いやなにも謝っていただくようなことは… 』

濵田さんは続ける

濵「俺あの日、初めて会ったのにいきなり電話番号とか渡しちゃって、気持ち悪かったやろ、迷惑…でしたよね」

何となく悲しそうに言う濵田さん。

電話番号…

あ。

あの日疲れてすぐ寝てしまって、ポケット中のメモの存在を今の今まですっかり忘れていた。

連絡も1本も入れてない。

『わ、私の方こそすみませんっ、すっかり忘れていました…』

濵田さんは私の言葉を聞くと、なんやぁ〜と
頭を抱えて微笑んだ。

濵「そんなことやったんか、俺てっきり嫌われちゃったかと…」

そんな嫌うなんてむしろ好き… とは言えなくて

『家帰ったらすぐ、すぐに連絡しますっ』

濵「待ってます、」

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