Hot Coffee_ 《紫》 (ページ14)

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まだ外は明るかった。

雲ひとつない晴天だったにもかかわらず、
気温は既に真冬で、カイロを握りしめて外に出る。

すーっと、肌を撫で回すように吹き抜ける冷たい風。

『寒っ』

早く家帰ってコーンスープでも飲もうかな、と
胸を躍らせながら店から1歩出ると

怪しげに店内を覗く細身の男性が1人。

なにっ、不審者？強盗？荒らし？
マスクしてサングラスかけてるし…

完璧に不審者の装い…

『…あの…っ』

濵「あっ、いや、自分、そんな、怪しいものじゃ… 」

必死に弁明しようとする姿は不謹慎にも可愛いと
思ってしまった。

いやいやいや、相手は不審者。可愛いなんて。

『…良かったら中でゆっくりしていってくださいね』

多分悪い人ではないと直感で思ったので、
お店自体はまだ店長がやってるし、興味があるなら
是非珈琲を飲んでいってもらいたい。

そういうとお兄さんは芸能人でも見つけたかのように
目を見開いて、

濵「あっ！！！もしかして…もしかして、電話のお姉さん…ですかっ？」

一瞬電話のお姉さんってなんだと思ったけど、
すぐにピンと来た。

『あっ、珈琲7つのっ』

濵「濵田です、濵田崇裕っていいます」

『 Aです、AAですっ、』

うわぁ、とか何とか言いながらとにかくニコニコしてて幸せオーラ全開の人やなぁ。

その時、ふわっととても真冬とは思えない暖かい風が吹いた。

厳密に言えば私の心に。

濵「あのこれ…」

と、周りを気にしながら取り出したソレは
電話番号の書かれた1枚のメモ。

濵「…じゃ、俺戻らなあかんから
よろしくお願いします、Aさんっ」

キラキラの笑顔でヒラヒラと手を振りながら、
道を駆けていく濵田さん。

濵田さんが見えなくなった頃、私の胸は鼓動が止まらない。それどころか早くなっている。

その正体が何かを理解するのにそう時間はかからなかった。

恋。

恋だった。

注文を受けている時から始まっていた恋心は、

今日実際に会ったことで加速した。

まだ、彼の事もよく知らないのに。

恋に堕ちてしまった。

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