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『それで俺にヘルプの電話をかけたの?』
機械の向こうから聞こえるのは、焦ったように早口で話す後輩の声。
あれから昼食をとった直後、私のもとには一本の電話がかかってきた。
「ヘルプなんてそんなとんでもない……とにかく、こいちゃんか一二三さんじゃないと回せそうになくて!なんとか頼みます!」
今、どっちもここにいるけどね......
そんな本音は心の奥にしまい、代わりに少しの苦笑いが浮かぶ。
『あはは、そういうことにしとく。じゃあすぐ向かうね。着くまでの間だけなんとか耐えて』
ありがとうございます、の声を合図に通話終了ボタンを押す。
それと共に丁度食器を洗い終えた一二三が、私の方へ寄ってきた。
「なんて?」
『客が多すぎて回ってないって』
「そっかぁ......俺っちにも言えばいいのになぁ」
む、と口を尖らせる一二三。あーもう、美形は何やっても良く見える。
その様子にちょっぴり意地悪をしたくなり、冗談まぎれに口を開いてみる。
『何、そんなに私と一緒にいたいの?』
一二三が、少し驚いた顔をする。
しかしすぐに眉間にしわを寄せ、ジトっと私を睨んだ。
「俺っちはそうだけど、Aちゃんは違うの?」
『へ!?』
嘘、てっきり照れたりするかなって思ったのに。
予想外にも彼はサラリと受け答え、更には私に解答権が回されてしまった。
戸惑っていると、一二三は私の後頭部にするりと手を添える。
「俺っちはAちゃんと離れるの、こんなに寂しいのに。Aちゃんは平気でそんな意地悪言えちゃうんだ?」
長いまつ毛の奥にある黄金の瞳が、切なそうに揺れる。
宝石級と崇められる美しい顔は、みるみるうちに私に近づく。
『わ、わー!!ごめん冗談だから!』
ぎゅっと目を瞑り、力いっぱいに彼の胸を押し返す。
するとすぐに一二三は「ぶはっ」と気の抜ける笑い声を漏らした。
「Aちゃんってば可愛すぎっしょ!めっちゃ焦ってんじゃん」
かっ、からかわれた……!!
『な.....っ、ん!?』
反論しようとすると、ぱっと唇を塞がれる。
代わりに肩がびくりと跳ねた。
「へへっ、充電完了〜!Aちゃんのスーツ取って来っし、ちょっちお待ち!」
彼は満足そうにはにかみ、パタパタと奥の部屋へと行く。
一人部屋に取り残された私は、ただ顔を赤くすることしかできなかった。
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あかつき(プロフ) - ぽぴらさん» わー!!お返事遅くなってすいません。。えっ!びっくりです!笑嬉しいです…!笑あとこいちゃんめっちゃかわいかたかっこいいです、、、。 楽しみにしてます〜〜!! (2020年4月25日 21時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - あかつきさん» コメントありがとうございます。拙い文ですが、そんな風に言っていただけてとても光栄です!実はあかつきさんの作品、閲覧させていただいてます笑 乱数の妹ちゃん、凄くかわいいなぁと思いながら読んでます(''*) 更新頑張ります〜! (2020年4月11日 2時) (レス) id: 7328f92863 (このIDを非表示/違反報告)
あかつき(プロフ) - 感想失礼します。すごく面白いです。一つ一つの描写だったりが上手で読んでいて楽しいです。私も小説を書いているのですが、文才が追い付かず、本当に尊敬しています。これからも更新楽しみにしています。 (2020年4月11日 1時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
梓 桜 。(プロフ) - お忙しい中わざわざお返事頂けるなんて恐縮です( ; ; )このご時世ですから落ち着かれている時にゆっくり更新で構いません!更新ありがとうございます。゚(゚´▽`゚)゚。 (2020年4月4日 2時) (レス) id: f31cec74f3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - 梓 桜 。さん» コメントありがとうございます。そんなふうに言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) 遅筆ですが、気長に更新待ってくださるとありがたいです、これからもよろしくお願いします´_ _) (2020年4月3日 13時) (レス) id: d4ba406946 (このIDを非表示/違反報告)
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