女王88 ページ40
清水潔子side
初めての印象は『近寄り難い』だった。
A「……降りてきていいって言われたから……?」
そんな理由で体育館のギャラリーから飛び降りてしまうような不思議な子。
やっぱり近寄り難いと思った。
1年生の中でも一際有名な汝汪Aちゃんは、女王とも呼ばれ、その絶大的なカリスマ性で多くの人を惹きつけていく。けれどもその反面、少し『不気味』でもあった。
清水(……全く笑わない……)
私も、表情が変わらない方だと言われるけれど、それでも人並みに笑ったり、泣いたりはする。
でも、彼女にはそれがない。
だからこそ、彼女にどう接することが正解なのかわからなかった。
試合も終わって、練習試合も組めて、皆満足そうに帰路につく最中、何故か私はAちゃんと隣に並んで歩いている。
清水(……どうしよう……なにか話した方がいいのかな……)
元々私もそれほど口数が多いわけじゃないため、余計にどうしていいかわからない。
清水「マネージャーとか、興味ある?」
だから、そんな話題の振り方しか私には出来なかった。
A「……きっと、邪魔になってしまうので。」
清水「えっ……」
興味がないわけじゃないのだろう。
けれども目の前の子はすぐさま「自分は邪魔になる」と口にしたのだ。
清水(……昔、何かあったのかな……)
僅かに俯くその表情は何処か悲しそうで、どこか顔色も悪く思えた。
A「……あと、昨日は兄のことでご迷惑おかけしてすみませんでした。」
軽くペコッと頭を下げたAちゃん。
そこでようやく昨日校門の前にいたあの男の人がAちゃんのお兄さんだったのだと気がついた。
すぐにその場からいなくなってしまったし、何を話していたのかは分からなかったが、あまりいい雰囲気ではなかった。
清水(……もしかして、家族と上手くいっていない……?)
A「二度と迷惑はおかけしませんので。」
きっぱりとそう言い切ったAちゃんはもしかしたら今日は謝罪のためにここに来たのかもしれない。
そして、もうバレー部に関わらないように、けじめとして来たのかもしれない。
清水「また、見に来ていいから。」
気づけばそんな言葉が私の口からこぼれ落ちていた。
A「えっ……?でも私は部外者ですし……」
清水「たまに手伝ってくれるだけでいいから。いつでも来て。きっと皆歓迎してくれるから……その、1人が辛い時とかあったら……」
近寄り難い、そんな風に思っていたのに、いつの間にかこの子の力になりたいと思ってしまう。
やっぱりAちゃんは『女王』なんだな、と思った。
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星屑(プロフ) - おしるこぉさん» コメントありがとうございます!そうです、彼こそがシスコンを極めた勘違い体質の兄です(キリッ) (2019年2月27日 22時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
おしるこぉ - 優人さん…………シスコンじゃねぇかッッッ(真顔) (2019年1月24日 19時) (レス) id: 4bcefc2029 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - ☆AZUSA☆さん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けたなら書き手としても嬉しい限りです。これからもどんどん勘違いが加速していきます(笑) (2018年11月24日 11時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
☆AZUSA☆(プロフ) - 初コメです!兄妹のやり取りがア○ジャッシュみたいで面白いです笑 (2018年11月7日 20時) (レス) id: a8b54384e2 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 後ろのメリーさんさん» 応援の言葉ありがとうございます!毎日待ち遠しく思ってくださるなんて……!書き手としてはこの上なく嬉しいです!たくさん更新できるように頑張ります! (2018年9月29日 21時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星屑 | 作成日時:2018年3月27日 20時