女王75 ページ27
楠木side
楠木(……うわぁ、ほんとに来ちゃったよ、お兄さん。)
放課後、姉貴のお兄さんが校門付近でうろうろと徘徊しているのを遠目に眺める。
あまり目立って見張るわけにもいかないので、俺たちブルーアイの面々は様々な位置に隠れて見張りとしての役目を果たしている。
かく言う俺は烏野高校のグラウンド付近に植わっている木の上、生い茂る葉っぱ達に身を隠している。
どうしてそこに登れたとかそんな細かいことは気にしちゃいけない。
楠木(……姉貴にしたことを思い返せば殺してやりてーぐらいだってのに。)
姉貴と俺が出会ったのは、俺が中学2年生のころ。その時姉貴はまだ小学5年生だった。(どうして3歳年上なのにまだ高校生かというと去年留年したからである。)
俺はその時、どうしようもなく荒れすさんでいて、ブルーアイの前身である不良グループのリーダーとして、散々な事をして回っていた。
A『……寂しそうだね、お兄ちゃん。これ上げるよ。』
楠木『はぁ?んだよ、ガキ。』
そんな時、ふとした小競り合いが原因で山ひとつ向こうの雪ヶ丘中学校の不良グループと抗争が起きた。
結果は俺たちの圧勝。
それなのに俺の心は荒んだままで、仲間を置いていったまま、近くを徘徊していた時、『家の庭に繋がれていた』姉貴と出会った。
楠木『……は、お前何してんだよ……?』
A『何って、お兄ちゃんにこれあげるの。甘いもの食べると元気になれるよ?』
首に繋がれた犬用のロープをピンっと張らして俺の方へと飴玉を差し出している目の前のガキに俺はなんとも言えない気持ちになった。
俺と同じだ。
俺みたいに家族に認められない。認めてもらえない子供だ。
楠木『……おい、ガキ。名前は?』
A『A。でもお母さん達は『けっかんひん』って呼ぶよ。』
そうあっけらかんと言い放った当時の姉貴に、俺は少なからずショックを受けた。
こんな小さな子供に、欠陥品?
ふざけてる。馬鹿げてる。狂ってる。
そして、何より許せなかったのはそれを見て見ぬふりをする周りと、助けようともしない姉貴のお兄さんだった。
だから、今から5年前。
俺は姉貴を誘拐することにした。
俺は当時から親と縁を切り、一人暮らしをしていたし、仲間と協力しながらなら姉貴1人くらいなんとか面倒みれるだろう、と思っていた。
しかし、姉貴はベランダから飛び降りて、そのまま家に戻ってしまった。
帰らなくては叱られるという恐怖心と、まだ親が自分を愛してくれるかもしれないという、小さな願望があったから。
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星屑(プロフ) - おしるこぉさん» コメントありがとうございます!そうです、彼こそがシスコンを極めた勘違い体質の兄です(キリッ) (2019年2月27日 22時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
おしるこぉ - 優人さん…………シスコンじゃねぇかッッッ(真顔) (2019年1月24日 19時) (レス) id: 4bcefc2029 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - ☆AZUSA☆さん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けたなら書き手としても嬉しい限りです。これからもどんどん勘違いが加速していきます(笑) (2018年11月24日 11時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
☆AZUSA☆(プロフ) - 初コメです!兄妹のやり取りがア○ジャッシュみたいで面白いです笑 (2018年11月7日 20時) (レス) id: a8b54384e2 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 後ろのメリーさんさん» 応援の言葉ありがとうございます!毎日待ち遠しく思ってくださるなんて……!書き手としてはこの上なく嬉しいです!たくさん更新できるように頑張ります! (2018年9月29日 21時) (レス) id: 64e74c6b8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星屑 | 作成日時:2018年3月27日 20時