幼馴染は…【草津錦史郎】Part3

#103 実行 ページ5

仕事が終わるとキンシロウは、一緒に帰ろうと誘ってくれた。私は嬉しくなってニヘニヘしてしまったが、キンシロウは笑わない。
玄関から出ようとすると、いつも玄関前に立って待っているキンシロウの姿がないので、何処だろうと探すように振り返ると、キンシロウは自分の下駄箱に立ち尽くしたまま動かなかった。

貴) キンシロウ？

草津) ……！な、なんだ？

貴) 大丈夫？

草津) ……ああ。

疲れたのかな。確かに、あの量はサラリーマンが1人で残業してでも終わらせようと試みるけど朝になっちゃうってくらいだったし……。いつか倒れてしまって会えないんじゃないかと、縁起でもないことを考えてしまう。前に熱を出して倒れた時は不安で仕方なかったしな……。

貴) 無理しちゃダメだからね。

草津) 無理などしていない。

嘘つき。もっと頼ってほしいよ。昔のキンシロウは何処へ行ってしまったの？無邪気に笑っていた頃の貴方は、今の貴方で隠れて見えません。振り返って夕日で伸びた影を見つめる。私が止まったことに気付かない彼は踊り場まで降りていく。そこで気付いたようで私を呼んだ。

草津) 何をしている？早く帰るぞ。

貴) ねえ、キンシロウ。ちょっといい？

言いたくないけど、言わないといけないよね。
歯を食いしばり、ズボンをギュッと握って、深呼吸してから口を開けた。






貴) 私と、別れてください。

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