幼馴染は…【草津錦史郎】Part3

#130 好意と謝罪 ページ32

頭を打った時の衝撃なんてない。

強く体を打ちつけたような感覚もない。

ああ、存在してないんだ。

そう思いながら、少しだけ嬉しくなった。けど、まだキンシロウとの約束が残っていた。幼い頃の約束だけど、私の抹茶を飲みたい。それは、1回じゃなくて私の生きている限りずーっとって意味が含まれている。

あと、キンシロウの事を全然知れてない。昔と違う所とか、昔とは全く変わってない所とか、アツシと何があったのかとか……なんだ、消える前にやること多かったじゃん。

こんなに未練があったんじゃん。

貴) キンシロウ、好きなのに…ゴメンね

どうしてか口に出したこの言葉。どうせ届くことのないこの言葉。もう知らない。届かないんだから、言ったって……

キンシロウには、どうしても届いて欲しかった。もう会えないかもしれないんだから。


けど、なんで感覚があるんだろう。

なんで体が重いんだろう。

なんで涙が出るんだろう。

左手にあるこの体温が感じられるのは？





貴) なんだ、私、生きてるんじゃん。

既に分かっていたことなのに、消えるって思い込んで隠してた。目を開けたら見覚えのある保健室の天井。左手にある体温だって……君しかいないよね？





草津) ……A、目が覚めたか？

貴) うん、いろんな夢見てたよ。

草津) 呑気だな。

貴) お説教は、ないの？

草津) 説教をする気が失せただけだ。

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