誘拐 (ページ36)

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こんばんはページ36

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その日の夜。

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

母｢どちらさま…っ、A！！｣

私の手を引こうとするお母さんの手を
樹が払いのける。

樹｢夜分遅くにすみません。
話し合いをしたいので家に上げてくれませんか｣

すると、奥からなんの騒ぎだと父が出てきた。

私の姿を見るなり、いいだろう。入りなさい。と
父がいうと遠慮がちに母がどうぞと中へ招く。

中に入ると早速
Aを連れてきてくれてありがとう
もう、君には用はないから帰りなさい。
と樹に言う父。

樹｢いいえ。僕はただあなたがたに
聞きたいことがあって来たんです。この子のあざ。
この傷はあなたがたがつけたんですよね。
それって、虐待なんじゃないんですか。｣

父｢これは娘が勝手に…｣

樹｢いいえ、コケた程度でこの傷は付きません｣

母｢あなたがつけたんじゃないですか？
だって、あの子を誘拐して
半年以上も経ってるんですよ？｣

樹｢僕が仮につけたとしたら、
こうやってAを連れて帰さないですよ
…じゃあ、質問を変えます。
あなたがたはこの子を、Aを愛していましたか？｣

母｢愛しているに決まっているじゃない。ねえ？｣

樹｢じゃあどうして箸の使い方や歯ブラシの使い方、
感情の表現の仕方を何ひとつ教えなかったんですか？｣

母｢え、それは、｣

樹｢僕は少なくとも半年の間であなたがたよりかは
Aのことを知ってるし、沢山のことを教えました｣

父｢分かったから。
今なら警察にも言わないから娘をおいて帰りなさい｣

樹｢僕が帰ってから、
半年分のしつけでもするんですか？｣

父｢しつけ？何も知らないな｣

母｢しつけは悪い時にするもんですよ？
今はAが帰ってきたんだから、
するわけないじゃないですか｣

樹｢今は、ですか｣

母｢ええ、そうよ
Aが悪いことをしたときに、
…こうやって引っぱたくんです。｣

私はお母さんに腕を引っ張られ、
そのまま頬を打たれてその場に倒れる。

樹｢っ、A！！
…ほら、やっぱり虐待してるんじゃないですか。
俺のことは女じゃないからって捨てて。
Aは女だから大切にされてると思ってたのに。｣

父｢我々が君を捨てた？
うちの子供は娘だけですよ？｣

樹｢あー。もう覚えてないんだ。
俺の名前は田中樹。あなたがたが捨てた子供ですよ｣

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