誘拐 (ページ13)

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ぬくもりページ13

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ふとした瞬間、ジュリさんに抱きしめられた。

樹｢今まで待たせて、ごめん…｣(小声)

｢え、？｣

待たせてもないし、ただその現場に遭遇して
何故か殺されずに誘拐されただけなのに。

でも、知ってる。このぬくもり。

記憶はないけど、
この抱きしめられる感覚。いつぶりだろう。

父はあまり家には帰ってこない人だった。
だから遊んでもらった記憶も話した記憶もない。

母はとても厳しい人で、
近所の人にはいい母親づらしてるけど
家名に泥を塗るようなことはするなって
女の子らしくいなさいって言うのが口癖だった。

最初は私が悪いことをした時にお仕置きとして
暴力を振るわれていたけどそれがだんだんエスカレートしていった。

それでも母に褒められたいが為に勉強も頑張った。
だけど罵声や暴力を毎日振るわれ体は痣だらけ。
おかげで体育の授業も長袖を着られる冬以外は
全て見学にされた。

痣を見られるのが怖くて。
昼休みも給食が無ければ食べられなくて。

髪の毛も切りに行ったこともないし
スマホもないので流行りも知らない。

人と違うだけで、学校でもいつも孤独だった。

だけど、何故だろう。物心がつく前かな。

親でも友達でもない誰かに抱きしめられたのかな。
分かんない。感覚は知ってるのに覚えてない。

気付いたら私は涙を流していた。

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