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「、、、ん、」

三時間、経っただろうか。
アラームなどなくても外の空気感や光の加減で起きるのは当たり前になってて。

夢も、なにも。
恐怖や幸せや、怒りや苦しみや。
そう言う感情すらも抱かず、失神したかのように眠れたことにホッとした。

「効果抜群ね。」


シャラッ、と胸元で揺れる銀のそれを両手で握り締める。
返さなくちゃいけない。
けど、人目につかないようにしてあげなくちゃ。


「今更、邪魔はしないわ。」

うまくいくように祈ることなんてできないし、協力だってしない。
でも、その分邪魔もしない。
それが私の精一杯。


靴を履いて、外に出て。
すでに起きてる軍人たちに挨拶をしながら水場へ。
顔を洗って、目薬をさして。


さぁ、もうひと踏ん張り。
まだ失踪者たちがいる。

青い海。
こんなにひどい状況でも、海はあの日と変わらない色。
初めて空からこの海を見た時もこんな色だった。



「、、、彼の件も、探らなくてはいけないものね。」


私のやることは本来これではない。
だが、これをやらずしてそちらに行くことはできない。
本来はそっちへ行くべきなんだけど、


「私まだ休暇中だもんねーっだ!」

べーっ、と遠い海の向こうにいる上司に向かって舌を出して。
力一杯伸びをすれば、ほら。
私はまた、頑張れる。


[ひどい休暇になってしまいましたね。]
「!」


いつからいたのか。
やっぱり注意力が散漫になっているらしい。
振り向いたら、変わらずイケメンな彼がいて。
ついつい苦笑いしながら首にかかった銀を外す。


「ありがとうございました。嫌な夢どころか、本当に気絶したように眠れました。」
[それは良かった。]

手を伸ばして突き出せば、彼は笑いながらそれを受け取って、


「っちょっと、」
[無理は禁物ですからね。君はいつも自分の許容範囲を超えてしまう。]


上司のように、友人のように、
、、、恋人のように。


そのまま私の手をその大きな手で包み込んで、優しく撫でる。
わざわざ私が人目につかない今だ!とタイミングよく差し出した意味はあるのだろうか。
彼は本当に人目というものを気にしないな。

おわり。→←22



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作者名:ヒヨコ | 作成日時:2021年1月17日 21時

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