１０:世界に見えた歪み ページ10
私は終始真顔であった。
兄がいただとか、その兄に軟禁されていただとか、私がその兄を刺しただとか。驚く要素は山ほどあったのかもしれないが、どうもリアクションがとれない。
よく考えてみてご覧？その記憶が私にないのなら、彼が話した事は全て、他人事と同じなのだ。自分以外の誰かが体験したこと。そう感じられてしまうのだ。
まるで、本の読み聞かせをされているような。
「ビーチェ、もしかして気分を悪くした？」
ああ、そう。ビーチェ、は私の愛称だったのか。ベアトリーチェ･ヴァレンティノが自分の名前だと確信すると、それはすぐに分かることだった。
眉を垂れる青年に、軽く首を横に振る。「よかった」と安堵する青年を前にして、今が喋るタイミングだったのでは、と後悔する。ううん、大丈夫。気にしないで。言えることは沢山あるはずなのに、喉が詰まって言葉をうまく吐き出せない。心做しか、喉が痛く思える。
彼が口を塞いだので、私も話すことはなく、ただ横にいた青年を見るのをやめた。目の前には人混み。雑踏に子供の燥ぎ声が混じって煩い。向こう側の景色が見えない。
ふと、青年の考えに気づく。青年が何故逃げる場所としてここを選んだのか。
私たちを捜している兄からすれば、こんな騒がしい所を捜しても見つかるわけがないと考える。逃走するのにはあまり人に知られていない場所にするだろう、と思うだろう。彼は敢えてのマイナーではなくメジャーな場所を選んだ。
何をインプットされているんだ。そもそも、アンドロイドに感情や意思があるのがおかしい。
数々の謎は解ける気配もなく、私は潔くすっぱりと諦めた。
おかしいといえば、そういえば、先程からちらちらと獣の耳が生えている人がいる気がする。カチューシャなどに付いている偽物で、何かのコスプレかもしれないが。
「あ、気づいた？」
私が兎の耳が付いた人を目で追っていると、不思議に思っている事がバレてしまったようだ。
「ここね、おかしくなっていってるんだ。人に獣耳が生えたり、アンドロイドに感情が芽生えたり。そして」
青年が私に手を伸ばす。頭のあたりに手を持っていったからてっきり触られるのかと思ったが、それは明らかに頭に触れられない位置に動いていった。しかし。
「キミの"コレ"だったり、ね」
コメカミのすぐ近くに触られる感覚があった。何かを掴まれている。普通の人間なら付いていない何かを、触られている。流れる人の間から店の窓が見えた。そこに映った私には.....
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←９:知らない自分
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズ(プロフ) - おさかなさん» 登録ありがとうございます...！なるほど...纏めるのも大事ですよね！頑張ります！ (2018年7月26日 16時) (
レス) id: a1632902ab (このIDを非表示/違反報告)
おさかな(プロフ) - 占ツクで私が普段読むような小説を読めるとは思っていませんでした。今2文で表現しているが、1文に纏められるところがいくつかあるなーと感じました。わかりにくい言い回しかもしれません、すみません。お気に入り登録させていただきました。これからも頑張って下さい。 (2018年7月25日 18時) (レス) id: 8a0d738c09 (このIDを非表示/違反報告)
イズ(プロフ) - 眠い少女さん» ありがとうございます...！研究してもっと良い作品にできるようにしていきます！ (2018年7月23日 16時) (レス) id: a1632902ab (このIDを非表示/違反報告)
眠い少女(プロフ) - 言葉が難しすぎるのかもしれないですね(*´ω｀*)これからも頑張って下さい！！ (2018年7月23日 9時) (レス) id: 5372210ae9 (このIDを非表示/違反報告)
眠い少女(プロフ) - 語彙力はありますね！！でも…表現力が足りないのかもしれません。例えば…そう私を見る目は…の所を、そう私を見つめる目は、ただ純粋に頼んでいるように見えた…みたいな感じですね。 (2018年7月23日 9時) (レス) id: 5372210ae9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イズ | 作成日時：2018年7月20日 16時
