53. ページ5
.
「そういえば葉山さんはなんでここに？」
同じチームになった女の子ふたりとはあまり会話はせずに、
自分の番がきたら投げてそれでまた席に戻ってきてを繰り返していたら、「こういうのはあんまり好きなタイプじゃないと思ってた」と阿部くんにそう聞かれた。
うん、たしかにこういうのはあまり得意じゃない。
昔は平気だったんだけどな。
いつからか、人がたくさんいたりするところはなんとなく落ち着かなくて、
ましてやこういう派手な人たちとは関わりたくなくて。
…だけど、辰哉くんが呼んだって言われてしまったから、なんとなく、断れなかった。
彼の頼みには昔からめっぽう弱い。
惚れた弱みというのかなんなのか、恋心はもう過去のものだけど、どうしてもまだ、私は辰哉くんの押しに弱いんだと思う。
『…えっと、辰哉く、あ、深澤くんに誘われて、(……一応それで、あってるよね？)』
「ふっか？」
聞き返してきた彼に首を縦に振る。
続けざまに「ふっかと仲良いの？」と聞かれたのでそれにはうーん、と首を傾げておいた。
仲、は良くないと思う。別に。
数週間前、突然辰哉くんが私に構うようになるまでは、ほとんど会話することもなかったしそれなりの距離感もあった。
あの頃だって、私が一方的に彼が好きで後ろをついて回っていただけで、辰哉くんは別に私に特別な感情を抱いていたことはなかったと思う。
辰哉くんにとって私はただの幼馴染だ。
仲が良いとかそういうのは私たちの間には関係ないんだろう。だってこの関係は、たまたまの巡り合わせだから。
なりたくてなったわけではないし、偶然が積み重なった結果の関係性、というだけなのだ。
へぇ、と小さく声を漏らした阿部くんがちらりと奥の辰哉くんに視線を移したのにつられるように、私もそっちを見る。
視線の奥の辰哉くんは、近くのレーンの別チームの女の子となんか楽しそうで。
お礼、とか言って私をここに連れてきたくせに、全くそんなことは忘れてはっちゃけてる様子の彼にちょっとムカっときて、
それから同時によくわからない寂しさみたいな気持ちが胸を掠めたから、私は洗い流すようにペットボトルを手にして烏龍茶を飲み込んだ。
……そっちが呼んだくせに、ほったらかしにしないでよ、ばか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - ぽめさん» こんにちは！描写気をつけて書いているのでそのように読んでいただけてとても嬉しいです…！優しいお言葉ありがとうございます！この先もお付き合いいただければ幸いです…！ (2021年11月1日 22時) (
レス) id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
ぽめ(プロフ) - こんにちは！ふっかの主人公ちゃんへの誘惑が甘過ぎて、毎回キュンキュンしながら読んでます、、、描写もとても細かくて、頭のなかで様子をイメージしながら読むのがとても楽しいです…！この先ふっかがどうするのか…楽しみです！無理はなさらず頑張って下さい！ (2021年10月24日 21時) (レス) id: 974c37f842 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 名無し88264号さん» はじめまして…！一番だなんてわたしには勿体なさすぎる御言葉ですが、そのように言っていただけて本当に嬉しいです！コメントありがとうございます！こちらこそこれからもお暇な時に読んでいただけたら幸いです…！ (2021年10月11日 2時) (レス) id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
名無し88264号(プロフ) - はじめまして！色んな作品を漁っていたらこの作品に辿り着いたのですが、今まで読んできた作品の中で一番好き！っていうくらい大好きです、、思わずコメントまでしちゃいました(*´-`)これからの更新も楽しみにしています！無理せず頑張ってください！ (2021年10月3日 13時) (レス) id: 6f3aec2268 (このIDを非表示/違反報告)
雪色ぺんぎん(プロフ) - こゆきさん» えええぇ…もうこんな神作者様にそんな風に言って頂けて幸せしかないです！最新話弾丸で読みました…もうほんと素敵です。これからのずっと応援してます！このご時世ですのでどうかお身体に気をつけてお過ごしくださいませ。長々と失礼しました。 (2021年8月27日 0時) (レス) id: 4008c4223a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2021年5月2日 12時
