25. ページ25
>Fukazawa side.
『おいし？』
「………まぁ、うん」
Aを食堂に連れてくることに成功した俺は、彼女を四人掛けテーブルに座らせてその前の席を陣取った。
俺の視線を受けながら、ちょっと食べにくそうにおにぎりをちびちび口に運ぶA。
その感じがなんか小動物みたいで可愛くてたまんないけど、流石にここは人が多いから緩む頬を悟られないように必死で抑える。
しどろもどろに動くふたつの瞳は俺の質問に一瞬こっちを向いたけど、それからまたすぐに手元に降ろされた。
その直後「……辰哉くんのは、？おいしいの？」と少し控えめに抑えられた声で質問を返され、彼女が会話をしてくれるつもりであることにテンションが上がる。
『ん、おいしーよ』
「…そう」
ちなみに俺の昼飯はラーメンだ。うちの学校の食堂のラーメンはめちゃくちゃ美味しいから、ほぼ毎日俺はこれを食べている。
加えて、今日はAが前にいるからいつもの3倍はうまく感じる。
普段は照や翔太と一緒だけど、今日は適当に誤魔化して、どこに行くのかと聞かれる前にひとりで出てきた。
あいつら、いや、特に翔太。俺がAのこと飯に誘うなんて知ったら絶対面白がってついてくるから、今回は内緒だ。
『Aもちょっと食べてみる？』
「…いや、大丈夫」
『そっか』
自分の食べてるラーメンを少し勧めれば、やんわり断られたけどそんくらいじゃ落ち込まない。
断ったのをちょっと悪いと思ったのか、代わりに俺の方を見てくれたからそれでチャラだ。
目が合って、彼女はその瞳の奥を揺らした。その瞳の中に自分が映ってるのを確認して、安心感を得る。
「…なに？」
『ううん、なんでもない』
大丈夫、いま俺はAの視界に入ってる。
俺のこと見て、どうしたらいいか戸惑ってる。いま彼女の頭の中にいるのは、俺だ。
そうやって、少しずつ意識させればいい。少しずつ俺のことを思い出させて、彼女の中のどこかに残っているはずの俺の存在を引き出せばいい。
そんな俺の思惑を知らない彼女は、俺の視線を受けながら口に入れてもぐもぐしていた弁当のおかずをごくりと飲み込んだ。
それが思っていた以上に美味しかったのか、ほんの少し頬を緩めてた彼女に心が動く。
やばい、もうかわいいしか出てこない。
俺の語彙力が欠如しすぎてて、その可愛さを伝えきれないのが悔しいくらいだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4347人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - さゆさん» コメントありがとうございます…！更新頑張ります！！ (2020年11月29日 10時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 楽しいです！更新楽しみにしてます(^^) (2020年11月26日 23時) (レス) id: 04307595de (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» いつもありがとうございます…！自己満の拙い作品ですが、好きだと言っていただけて本当に嬉しいです！さらに楽しんでいただけるよう、更新頑張ります…！ (2020年10月18日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ひな(プロフ) - うわあ新しい作品もめちゃめちゃきゅんきゅんします…！！ほんとにこゆきさんの小説好きすぎて…毎日見てます！！しぇあはうすの住人もハニーシュガーの誘惑も楽しみにしてます＾＾ (2020年10月12日 16時) (レス) id: cc80ef896f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - さーたんさん» コメントありがとうございます…！描写とても考えながら書いているので、そのように言っていただけてとても嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2020年10月11日 21時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年10月5日 23時
