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妙にゆっくり歩くタダヨシ君。
風ひゃっこい！て笑うタダヨシ君。
キリッと車道側は任しといて！言うタダヨシ君。
どこ切り取ってもイケメンやねんほんまに。
街灯が点ききった住宅街を男二人で歩くのは逆に新鮮で，
何か凄く変な気分。
...別にやらしい意味ちゃうけど。
急に消えたと思ったら電柱の影から出てきたり，
電灯の下でちょっとダサい決めポーズしたり。
ほんまに面白い子やな，弟にしたいくらい。
「 ユウくん見て！ネコ！ 」
「 え？どこ？ 」
「 そこやって！歯医者さんの看板の電柱の！そこ！ 」
にゃんにゃんにゃーん...とか呟きながら，
車道を跨いだ向こう側の黒猫を追うタダヨシ君。
それをほのぼのしながら眺めとったんやけど。
ちょうど斜めに車道を横切る時に，
急に迫ってきた無灯火の乗用車。
何でこんな危険な運転手が音せぇへんヤツ運転しとんの。
嫌に冷静に批判する俺 ，
猫に夢中で一向に車の存在に気付かないタダヨシ君。
手ぇ伸ばしたら届く？
それとも俺もろともあっち側に突っ込むべき？
多分ここまで考えが巡ったのはほんの一瞬で，
車がすぐそこまで迫った時には条件反射か何かで
「 忠義！！！ 」
「 え 」
馬鹿みたいな大声で名前を呼んどった。
びっくりしてこちらを振り向いたタダヨシ君の
動作の反動で浮いた腕をグワッと全力で引っ張って。
一瞬何やねん痛いって言いたそうな顔しとったけど，
直後すれ違い様に怒号を浴びせてくる運転手を見て
その内容でどんな状況に置かれていたか理解したらしい。
「 ほんま...死ぬかと思っ...ハァ... 」
「 冗談やないてほんまに！阿呆なん！ 」
「 ごめん...ごめんなさい... 」
「 ああ！もう！ほんまに！おちおち歩けんやんか！
何なん！『 なくさんように繋いで 』って！
ほんっまに！ああ！阿呆！ 」
ほんまにとか阿呆くらいしか出てこんのに言葉を繋ぐ。
出会って何秒即合体みたいなキャッチコピーのビデオか！
ってくらいこの数十分だけで距離が縮まっとって，
ほぼ抱き締めてるみたいな体勢やったのも思い出して
ハタから見たらどないな関係に見えるやろって考えた。
とりあえず酷い剣幕で怒鳴ったのを謝る。
「 ほんまごめんやけど...もっと気ぃ付けてや... 」
「 ゆるして... 」
「 そら生きとるから許すけど！ 」
また説教したくなるのを抑えて，
『 なくさんように 』手を強めに掴んでやった。
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作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
