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⋆ 緑 ⋆
「 大倉くん，さっきキャンセル入ったところに
新規さんのご予約入りそうなんだけどいける？
ニシキド君とヤスダ君，案内できないから... 」
ほんまはむちゃくちゃ嫌やった。
ひっさびさに入ったキャンセル。
そこに予約が入りそうな気配なんて無かったから，
帰り際にアルコール買って食材買って一人で仰山飲も！
とか思ってたのに。
それの事で頭はいっぱい。
お腹も鳴りっぱなしでむっちゃひもじい。
新規さん家で飲ましてもらえるかな。
食事は相手が駄目なら俺が作ればいい。
新規さんはプレミアムコースが選べないから，
玉袋より胃袋掴むしかない。
なんてひっどい下ネタかまして，
いつの間にか終わってた電話の内容を受付から聞く。
30代独身男性。
レンタル彼氏やらデリホスの利用経験はゼロ。
ちょっと人見知りっぽいとの事。
あとは食い気味やったとか。
こりゃあ時々おる
『 チェリーボーイ拗らして男に走った汚ないおっちゃん 』
みたいなパターンかぁ，またかぁ...
って意気消沈しとったはずやのに。
やのに。
なにこれ。
そこそこ綺麗なアパート。
辿り着いた玄関前にはゴミ袋とか一個もない。
インターホンで『 来たで！ 』とか言って呼び出したら，
出てきたの普通のお兄さん。
普通っちゅうか，かなーり整ってる。
チェリーボーイ拗らして男に走った汚いおっちゃんどこ？
ってちょっと戸惑う。
いつもは仕事やからって気張らんと言えない褒め言葉，
むっちゃサラサラ出てくるし。
気づいたらくっさい台詞吐いてもうてるし。
俺が運ぶからって両手に持ったカップから
コーヒーの香りを振り撒いて歩くユウくん。
...を，後ろから眺める俺。
さすがにさっきのはやり過ぎたかな，って思ってんけど
ユウくん後ろからでも分かるくらい耳真っ赤。
この人男もイケんとちゃう？
ほんまに新しい扉開けたろか？
「 ずっと台所で立っとらんでこっち来てや。彼氏やろ 」
あちち，って言いながらカップをテーブルに置いて
振り向き様にそんな一言。
あかんてそれ〜！むっちゃ萌える！燃える！
心のオネエウワー叫ばんといて，落ち着け俺。
抑えて抑えて何とか平常運転まで持っていった時の自分は，
「 ありがと。行く行く 」
いつでもむちゃくちゃ爽やかな彼氏やと思う。
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作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
