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すぅーーー！ってむっちゃ大きい深呼吸をしてから
玄関扉を開ける。
「 いらっしゃ， 」
「 ユウくん！今日はほんまありがとう！ 」
「 あ，あ，ううん，こっちこそありがとうな 」
帰宅した飼い主をお出迎えする大型犬よろしく，
満面の笑みで今にも抱き着いてきそうな勢いの
長身イケメン，タダヨシ君。
気圧されるわ気圧されるわ。
とりあえず靴脱がせてリビングに通す。
パパっと片付けたにしてはマシっちゃマシ。やと思う。
上着ここ掛けちゃってええやつ？
荷物ここ置かしてもらうな？
ユウくんの部屋めっちゃええ匂いする〜！
ほんまに彼氏やな，って最早達観。
男性用言うても女の子絶対喜ぶでコレ。
「 ユウくんち来るの初めてやけど，
なんかめっちゃええとこやね。気に入ってもうた 」
「 ああ，ありがとう。何か飲み物飲む？ 」
「 え，ええの？ 」
「 レンタルでも何でもまぁお客さんやからさ。
インスタントしかないけどコーヒーでええかな 」
「 ...ありがと 」
もしかして何か地雷踏んだ？
レンタルって禁句？
もっとホームページ読みこめば良かったかも。
インスタントコーヒーの瓶を冷蔵庫から出してきて，
せっまい台所でお湯を入れる。
砂糖とミルク要るんかな。
あ〜ミルク無いわ。消費期限切れた牛乳しかない。
砂糖もダマだらけ。ほんま良くないでこういうの。
お粗末な調味料棚とにらめっこしとったら，
後ろの床がミシッて鳴った。
「 ユウくん 」
「 うぇっ 」
「 何 今の声。びっくりしすぎやろ。
僕 今だけ言うても彼氏やからね？ 」
「 え，あ，あ，おん，分かっとるけど 」
「 分かっとるけど？ 」
「 ちょっと近ない？ 」
「 ええ？ほんま？こんなもんやない？ 」
こんなもんなん？
女の子とお付き合いしてもベッタリなことはなかったし，
今 斜め後ろで顔を見られているのがちょっと違和感。
っちゅうか，やっぱり引きずっとるやん。
どういう扱いしたらええんレンタル彼氏って。
色々考えとったら，肩をぽんぽんっと叩かれて。
振り替えったら頬っぺたにタダヨシ君の指がめり込んだ。
「 もしかしてユウくん女の子しか興味ない人？ 」
「 え？ 」
「 いや，僕みたいなん呼ぶの初めてって聞いたから 」
「 うーん，多分な 」
「 多分って何よ 」
笑ったタダヨシ君は俺の右肩に左肘を置いて，
そこに顎なんか乗せてきて。
「 新しい扉，僕が開いたってもええねんで？ 」
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作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
