2 ページ18
⋆
暑いし適当に来た電車に乗って適当に降りましょ，なんて
ほんまに行き当たりばったり。
そもそもシブタニさんは何が好きなのか，
何が嫌なのかとかすら全然分からんから
どこ連れてったらええのか全く見当も付かへん。
とりあえず都会と逆に向かう電車に乗ったら
さっそく座席の一番端っこに座って
縮こまって仕切りに寄っ掛かるシブタニさん。
何となーく眺めとったら遂に腕組んで寝始めた。
もう何か夜の電車の酔っぱらいみたいや。
発泡酒の缶持ってへんだけマシ。
酒臭くはない。酔っぱらってもない。
電車の揺れに揺られて眠るの時々気持ちええから分かるで。
この人絶対こういう時に起こしたらあかんタイプ。
つまり起きるまで降りられへんやつ。
察した俺はその隣に座ることにした。
...や，何で今まで立ってたんって話なんやけど。
ちょっと間隔をとって隣に腰を下ろすと，
爆睡しとったはずのシブタニさんが
目を擦りながらむっくり体を起こして
今度は俺の方にぱたっと寄っ掛かってきた。
飲み込めなさすぎてつい ええ，とか言うてもうたら
シブタニさんちょっと顔上げて
「 こういうベタなヤツ待ってたんちゃうん？ 」
って意地悪く鼻で笑う。
ほんでまたコテーンて俺の肩に頭預けて，
時々鼻ぷーぷーさせながら寝息たてて。
髪の毛くすぐったいんやけど。ええ匂いするんやけど。
ベタなヤツにときめく俺も大概やけどな。
しかも相手男やねんな。
暫く起きひんやろー思て携帯を開く。
とりあえず終点の駅周辺でよさげな店とか探しとこ。
シブタニさんに最初に言うた予約済みの店は夜。今は昼。
半日もレンタルしてしまったわけやけど。
この人起こさんかったらずっと寝てるんとちゃうの？
もういっそそれでもええよな。あかんかな。
この電車折り返しで乗車駅まで戻れるし，
そしたらタクシー拾ってうちに連れてって
ゆっくり寝てもらっても構わんし。
どっちのがええんかな。
どっちにしろ電車で寝とかれてもさすがにラチ明かんし。
もうぶん殴られるん覚悟で声をかける。
「 シブタニさん 」
「 ...何 」
殴られる。
めんどくさそうな声に咄嗟にそう思った。ごめんなさい。
「 お話いいすか 」
「 ...何 」
「 夜予約んとこ行くまでの時間，
ぶらり旅するのとうちで寝るのどっちにしましょ？ 」
「 ...何やて 」
この人ぜんっぜん聞いてへん。
⋆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 325人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
