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「 ...次の客な，扱いが荒いねんな 」
ワインもそこそこ減ってきた時，ぽつっとリョウが言った。
もごもごピザを咀嚼しとった口は止まって，
ティッシュで手を念入りに拭いてからグラスを掴む。
わりと多めに注いだはずのワインは
一瞬でリョウの喉に流し込まれた。
「 ムラカミくんは知っとるかもやし知らんかもやけど。
ほんまにおんねん，モノみたいに俺らを扱う奴 」
聞いたことはあった。
そういう客はなるべく出禁にすんねんけど，
ああいうのに限ってお金積むから断られへんねんって。
まさかそんな客をリョウが相手しとるとは思わんやんか。
思うわけないやんか。
気が付いたらリョウん事抱き締めとって！
みたいな展開も特に無いっちゅうか出来なくて，
ただただ次の言葉を待つだけになる。
「 ほんまさ，こんな事思うのあかんって分かっとるし
気持ち悪がられるのも分かっとるんやけど。
...ムラカミくんは優しく抱いてくれるんやろなって
レンタル彼氏としてムラカミくんと会うて思ってもうて。
ほんま，嫌なとこだけ染み付いてくねんな 」
聞かな聞かな言うとったんに
一番聞かなあかんとこで言葉が出てこなくなる。
別に気持ち悪いとか思わんし。
もっと頼ってくれてええねんで。
とか，そういう事すら喉元で止まってもうて。
そんな俺を気にもせんでリョウの話は続いた。
「 多分な，ムラカミくん訊こうとしてくれとったやろ。
何でこんな仕事に転職したん とかさ。
ああ別に訊こうとしてへんかったら聞き流して。
何で転職したってまぁ結局給料やねんな。
前ん会社，安定はしとったけど安月給やったから。
レンタル彼氏って簡単そうやな思って
軽い気持ちで始めてん 」
それが今じゃ人気彼氏。がっぽがぽ。
リョウはそう締め括った。
ワーッと稼げた奴はその仕事からなかなか足洗えんし，
逆にそんな仕事にお金落とすのも勿論やめられない。
痛いほど分かる。
やからリョウの指名も無くならんし辞められへんねんって。
コイツになら幾らでも出す。
抱け言うなら抱くし 抱かれろ言うなら抱かれてやる。
指名するんが俺だけやったらどんだけ平和なんやろって
特に恋愛感情も何も無いはずやのにめちゃくちゃ思う。
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作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
