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「 ムラカミくんやん... 」
「 リョウやん... 」
何この偶然。
二人とも呆然。
こんなんあれやん，
『 何億人もいるのに二人が出会えたのは奇跡だね♡ 』
『 出会いに感謝♡ 』
どころやないで。
それより確率低いやろ。
地元の友達がレンタル彼氏しとって偶然それ呼ぶん。
玄関で向かい合って固まる俺らに，
何を察したかウチのネコがすり寄ってくる。
「 あーあかん！ちょ，リョウドア閉めて！ 」
「 えっ？あっはい，すんません 」
「 ほんでお前はケージ戻ってような〜 」
上がっといて！洗面所そっち！荷物適当に置いて！
って指示飛ばして，ネコを寝室のケージに入れる。
めちゃくちゃ不満そうな声で鳴かれたけど，
リョウええ服着とったから毛ぇ付いたらあかんしな。
「 ムラカミくん 」
「 あん？ 」
「 ネコ飼ってんすね 」
「 おお。可愛ええやろ 」
「 夜な夜なにゃんにゃーん♡とか言うて 」
「 それは無いな 」
...あるんですけれども。
とりあえずリビング行き。ソファ座っとり。
言うたら従順に端っこ座りおって，
テーブルに置いたまんま忘れとった本なんかパラパラして。
「 ムラカミくんこんな分厚いの読めるん？ 」
「 失礼なやっちゃな。
そや，ペットボトルの緑茶しか無いけど出すで 」
「 拒否権無いやんか 」
もうほんま，ただ遊びに来た友達もてなすみたいやけど。
忘れたらあかん，コイツ今から二時間彼氏やねんな。
「 今からムラカミくんの彼氏なんやて 」
「 うーん 」
「 何やねんシンゴ君 」
「 何か嫌やなシンゴ君て 」
「 シンちゃん♡とかのがええ？ 」
くくくって笑うの変わっとらんけど，
こっち全然笑われへんからな。
とりあえずペットボトルからグラスに緑茶注ぎ変えて出す。
よっこらしょーーー！言いながら隣に腰掛けたら
おっさんやん。って馬鹿にされた。
「 まぁおっさんやけどな 」
「 ハイハイお兄さんお兄さん。ムラカミのお兄さん 」
「 雑やわお前 」
...沈黙。
ネコがケージ引っ掻く音と空調の音しかせん，嫌な沈黙。
リョウは電源点いてないテレビを真顔で眺めて
俺はペットボトルの水滴を目で追っ掛ける。
＿＿訊いてやらなな，とは思った。
何で時には体も売らなあかんこの仕事に走ったか。
何であの安定した仕事から
わざわざ給料も仕事日数も安定しない仕事に転職したのか。
...何かある気がした。
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作者名：帆苅 | 作成日時：2017年7月27日 22時
